友々素敵

人はなぜ生きるのか。それは生きているから。生きていることは素敵なことなのです。

今後の活躍が期待される作家

2024年04月05日 18時02分24秒 | Weblog

 「書名に魅かれて買った」と言う彼の言葉に納得した。浅野君が書店に並べられた本を見ていて、衝動的に手にした本は『答えは市役所3階に』(辻堂ゆめ著)である。彼が我が家に何冊か持って来て、貸してくれた中の1冊だ。

 副題に「2020年心の相談室」とある。何のことかと思いながら読み始めると、この時、日本中がコロナ禍で大騒ぎになっていたことを思い出す。亡くなった人もいたかも知れないが、もう忘れている。

 『答えは市役所3階に』は、「新型コロナウィルス感染症流行の状況を受け、このたび市役所三階に、2020心の相談室を開設することになりました」という市役所のお知らせで始まる。相談員には「臨床心理士の晴川あかり・認定心理士の正木昭三」とある。

 第1話「白戸ゆり」から、第5話「岩西創」まで、5人のコロナ禍の被害者(?)が相談する内容が記載されていく。そうだったなとか、そうだよねとか、思い出しながら、どんどん読まされる。凪良ゆうさんの小説もそうだったけれど、物語の展開が面白い。

 1話ごとの最後に、ふたりの相談員が相談者を分析する。その晴川の説明が凄くて、年齢の高い正木の方が感心して受け止めている。相談の時点では気付かなかったことを、晴川の分析で読者もまた教えられる。

 著者は心理学を研究した人かと思いながら、本の最後にあるプロフィールを見てビックリした。「1992年生まれ。東京大学法学部卒」とあったからだ。理詰めでコロナ禍の被害者を追っているのは、そういう学歴の人の作品だからなのか。

 読み終えてみると、5人の相談者が全部繋がっていた。これにも驚かされた。緻密な展開と仰天する結末を、さりげなく書くことの出来る人だ。今後の活躍が期待される作家になるだろうと思った。読ませてくれた浅野君に感謝!!

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする