NHKテレビの朝ドラ『虎に翼』を観ていると、昔のことを思い出す。私は昭和19年生まれだが、ドラマの時代はもっと以前なのに、戦後もまだそんな価値観が色濃く残っていた。男女平等ということで、同じ教室で机を並べていて、男女の差別は無かった。
けれど教室を出れば、男の子たちは女の子たちに対して、「女は黙っとれ」とか、「女のクセに生意気なことを言うな」とか、言い放っていた。家では男の子の無法さが許されていた。男の子たちにいじめられた女の子が、担任に告げ口をした。担任はベテランの女性教諭だった。
男の子たちが何をしたのか知らないが、私は担任に呼ばれ、「男の子の先頭に立って、女の子の席を回って、謝りなさい」と言われた。私が納得できない顔をしていたのか、担任は「級長なら、みんなを止めなさい。それが出来なかった責任を果たしなさい」と諭した。
小4のその時はよく分から無かったが中学生になって、担任の意図するものが理解できた。中学生になって、すぐに試験があり、その結果が廊下に張り出された。上位を占めるのは女の子が多かった。小学生の時は気が付かなかったが、女の子たちは大人びていて、なぜかキレイになっている。
『虎と翼』は、女が無能力者と扱われることへの疑問から、法律への関心が高まり、法曹界に進出する物語だ。女は読み書きが出来ないというか、必要ないとされた時代である。それでも時代は進んでいく。私の母は明治40年、田舎の農家で生まれだが、女学校を出て教師になり、2歳年下の父と恋愛し結婚している。
「当時では考えられない『走り』だ」と、従兄弟が言っていた。親が決めた人と結婚するのが女の幸せと、みんな思っていた時代である。ちなみに、従兄弟の母親(母の妹)は親が決めた相手と結婚している。
『虎と翼』の主人公は、恋愛結婚をするのだろうか。いやその前に、誰と恋愛するのかと思ってしまう。ちょっと気になるドラマである。