俳句大学投句欄よりお知らせ!
〜季語で一句 17〜
◆『くまがわ春秋』4月号が発行されました。
◆Facebook「俳句大学投句欄」で、毎週の週末に募集しているページからの転載です。
◆お求めは下記までご連絡下さい。
(info@hitoyoshi.co.jp ☎0966-23-3759)
「くまがわ春秋」
【季語で一句】(R3・4月号)
永田満徳:選評・野島正則:季語説明
鷹化して鳩と為る(たかくわしてはととなる) 「春-時候」
西村揚子
一病を得てよりの夫鷹鳩に
【永田満徳評】
「鷹化して鳩となる」は春の気分とともに、ユーモアを感じる季語。掲句は気難しかった「夫」が「一病を得てより」気安くなったということ。おかしくもある「夫」の変容は、「鷹鳩に」という季語にふさわしい。
【季語の説明】
「鷹化して鳩と為る」は七十二候のひとつ。陽暦では、おおよそ3月16日~20日頃。『呂氏春秋』に「鷹化為鳩」という言葉があり、獰猛な鷹が春のうららかな陽気によって鳩と化すことをいう。実際には起こり得ない幻想的な言葉だが、幻想的な春の気分を表す言葉で、春の陽がもたらす変化を言い表している。
雪代(ゆきしろ) 「春-地理」
桑本栄太郎
雪しろや一週間後上京す
【永田満徳評】
「雪代」は春の到来を感じさせる季語。掲句は、雪国から「上京」し、人生を歩み始めるということ。大地の出発である「雪代」とうまく取合わせられていて、春の四季のスタートを祝う句となっている。
【季語の説明】
春は山間部ではまだ多くの雪が残っている。「雪代」とは雪どけの水のことで、仲春になると、寒気がゆるみ、急に雪が溶けて川や海や野原に流れ出てくることをいう。春ならではの雪の様子を表す季語として、古くから俳句に詠まれている。「雪濁り」は雪代で川や海などが濁ること。ときとして大きな災害をもたらす。
蒲公英(たんぽぽ) 「春-植物」
河辺伸一
タンポポやふーっと吹いて子離れす
【永田満徳評】
「蒲公英の絮」は触れたり、吹いたりしたくなるほど、可憐である。掲句は、「子離れ」の決断が蒲公英の絮を「吹いて」行われたという。その行為に意外性があり、それほど深刻ではないところがよい。
【【季語の説明】
「蒲公英」は野原や道端に生え、根際から羽状に深く裂けた葉を放射状に出す。花茎を伸ばし、頂に黄色または白色の舌状花からなる頭状花を開く。花のあと形成される種子は「絮」と呼ばれ、上部に白い毛をつけて風に乗って飛んでいく光景はよく見られる。息を吹きかけて飛ばしたことのある方も多いだろう。