月刊「俳句界」2月号!
〜 この本のこの一句〜 望月周〜
◆ 作者の意図を越えた読みもいいですが、作者が詠まんとした意図を的確に汲み取って頂くことは望外の喜びです。
◆「 水俣やただあをあをと初夏の海 」はただ、初夏の水俣湾を詠んだだけだと思われているところがあって、この一句に込めた思いが強かっただけに歯痒さがあったのですが、これでスッキリしました。
◆ 望月 周氏は角川俳句賞、俳人協会新人賞受賞の若手俳人で、ますますのご活躍が期待されます。
「この本のこの一句」より
水俣やただあをあをと初夏の海
熊本県水俣。美しく穏やかな初夏の海が広ろ
がります。けれども、代表的な公害病の一つ
水俣病が想起されます。声高ではありません
が、人災の惨禍に対する作者の深い哀しみや
強い憤りを伝える一句であると思います。レ
トリックを駆使した多様な作品が作者の本領
ですが、抑えた表現が、情を打べるに有効な
一打となりうることを教えてくれる作品です。
熊本を襲った近年の自然災害(熊本地震・
九州豪雨)と向き合った作品群や、集中の白
眉(阿蘇越ゆる春満月を迎へけり)など、郷
土愛を貫く作家魂が感じられる一集です。昭
和二十九年熊本県生まれ。「秋麗」同人。