俳句大学投句欄よりお知らせ!
〜 季語で一句 46 〜
◆2023年『くまがわ春秋』9月号(第90号)が発行されました。
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永田満徳:選評・野島正則:季語説明
季語で一句(R5.9月号)
夜の秋(よるのあき) 「夏-生活」
外波山チハル
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湯上がりの髪梳く指や夜の秋
【永田満徳評】
どことなく秋めいた感じのする夜の「湯上がり」の「髪」を詠んでいる。洗い髪はさっぱりとして気持がいいが、「夜の秋」であればなおさら秋めいて感じる。「夜の秋」という季語のもつ感じをよく捉えている。
【季語の説明】
「夜の秋」は夏の夜に感じる秋の気配という意味で、夏の終り頃、夜になると、何となく秋めいた感じのする夏の季語。去りゆく夏に一抹の寂しさを感じる。個人の受ける「気配」「感じ」が主体である。「よるのあき」「よのあき」と読むこともある。近代以降は夏の季語として使われ、秋の季語である「秋の夜」のことではない。
合歓の花(ねむのはな) 「夏-植物」
桧鼻幹雄
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合歓の花獏に喰はれしやうな朝
【永田満徳評】
「合歓」とは夜になると、小葉を閉じるので「眠(ネム)」と付いた。「獏」は幻獣で、人の悪夢を食うという。悪夢を見ず、充分に眠り、すっきりした朝を迎えたことを「獏に喰はれし朝」と表現したところがいい。
【季語の説明】
「合歓の花」は淡いピンク色の花を咲かせる落葉樹である。痩せた土地に育つ樹木の代表的な植物。夜になると葉を閉じることから「眠りの木」、転じて「ネムノキ」と呼ばれるようになった。万葉集の時代から愛されている。漢字表記の「合歓」は男女が一緒に眠ることで、中国では夫婦円満の象徴として親しまれている。
西瓜(すいか《すいくわ》) 「秋-植物」
森川雅美
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どつしりと西瓜置かるる敗戦後
【永田満徳評】
大玉の「西瓜」が今にも切り分けられている情景であろう。西瓜に代表されるような「敗戦後」の豊かさに思いを馳せて、いつまでも豊かで平和な日々が続いてくれることを願っているところに心惹かれる。
【季語の説明】
「西瓜」は夏から秋にかけての代表的な果菜。形は球形または楕円形で大きくほとんどの果皮に縞模様がある。果肉は赤色が普通でまれに黄色もある。多汁で甘い。最も甘くなる旬は立秋を過ぎたお盆の頃であるため、秋の季語とされる。果肉の水分が90%もあるジューシーな果物。英語ではウォーターメロンという。