「震度が伝わる一冊」
鑑賞を始めたら、止まらなくなる作品がある。
一気に読んでしまう。一気に観てしまう。
一気に聴いてしまう。
引き込まれるような世界観がある場合のみ、
そのような現象が起きたりするのだと思う。
もちろん制作サイドの苦心の現れが、
そこにはある。
楽しんで欲しい。
という意図がなければなかなか難しいことだ。
梅雨の最中、一冊の句集がポストに落ちた。
遠く九州から届いたそれは湿り気を帯びて、
長旅をしてきた様子が見て取れた。
まずは労い撫でるような気持ちで封を切った。
装丁の重厚さに多少中身に気が重くなる。
難解な俳句作品がどっさりなのか?
という陰鬱さは、一句目で吹き飛んだ。
自身の重い肩の荷を降ろした作者の安堵から、
物語が始まるからだ。
何気ない日常から切り離されたこの数年間。
梅雨入りと共に不安になる気象災害。
また頻発する地震災害。
そして、疫病の蔓延。
そんななかでも日常的な喪や生は営まれる現実。
また瓦礫のなかに希望を見出しながらそこで生きる。
そんな作者の姿が生々しく見て取れる。
ドキュメンタリー映画を観たようだった。
俳句を全く知らない人にも多分すんなり入る。
物語として秀逸だからだ。
また、俳句に捉われて創作に難を来している人には、
あゝこうやっていいんだ。という視点をくれる。
つまり、読後感の佳い「本」なのである。
幼少期より本の虫であった私は、
かなり「本」を選ぶのだが本日のヒット作!
としてご紹介したい。
こういった想いに駆られるのは、
昨今なかったことなのでここにご紹介したい。
修学旅行を思い出し、また足を運びたくもなる。
永田満徳著「肥後の城」文學の森出版
梅雨のなかで読んでも爽やかである。
梅雨のなかだからこそ、かも知れない。
一気に心に風が吹いた。
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