

チャリ、という微かな小銭の音に反応して振り向き、レジの方へと視線をやる。掌やポケットの中で小銭を鳴らしている人は、煙草か新聞をさっさと買って帰ろうとしている人が多いので、お金の音には敏感だ。
【408ページ】
「あー、あと煙草の5番を一つ」
「かしこまりました」
すばやくマルボロライトメンソールを抜き取り、レジでスキャンする。
「年齢確認のタッチをお願いします」
[ken] 全国で65,000店以上を事業展開するコンビニの日常について、小説という形式で描かれた読み物は初めてかも知れません。小説は導入部分によって決まると言われていますが、『コンビニ人間』はわれわれに身近な「音」からスタートしており、「うまいなぁー!」と納得させられました。また、個人的な感想としては、セブンイレブンとFamily Martは、たばこの年齢確認をほとんどしないので、著者の働いているコンビニはLAWSONだと推測されます。(つづく)