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【445ページ】
正常な世界はとても強引だから、異物は静かに削除される。まっとうでない人間は処理されていく。
そうか、だから治らなくてはならないんだ。治らないと正常な人達に削除されるんだ。
家族がどうしてあんなに私を治そうとしてくれているのか、やっとわかったような気がした。
【450ページ】
「でも白浜さん、ついさっきまで迎合しようとしてたじゃないですか。やっぱりいざとなると難しいですか? そうですよね、真っ向から世界と戦い、自由を獲得するために一生を捧げる方が、多分苦しみに対して誠実なのだと思います」
[ken] 本書にある「正常な世界」とは現在の資本主義社会、それも高度に発達したといわれる日本資本主義の世界です。そこに適応できない人は「異物」として「削除」される、しかも静かにというところが不気味ですね。たしかにそういう厳格な現実はあるのですが、資本主義社会でさえ長い人類の歴史からすれば、ほんのわずかな期間限定の社会かも知れず、少なくとも永遠に続く社会ではないといえます。
法律や制度、会社の組織、家族制度、社会の雰囲気といったものは、言葉を換えれば一種の「フィクション(物語)」であるとの考え方もありますから、現在の状況だけで自分を追い込むのは得策ではありません。しかし、白浜さんのように、「苦しみに対して誠実」ではあるにしても、真っ向か ら世界と戦う手法だけではなく、もっとうまく立ち回りながら生きていくことが、自分や他者への誠実さではないかと思います。口で言うより困難だけれど----。(つづく)