世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

アダムとイヴに発見されたアベルの遺体

2014-02-17 05:05:42 | 虹のコレクション・本館
No,71
ウィリアム・ブレイク、「アダムとイヴに発見されたアベルの遺体」、19世紀イギリス、ロマン主義。

ブレイクは英国詩人らしく、観念性の強い絵を描くが、それが却っておもしろく、美しい。
ラファエル前派の画家たちより、洗練されているね。知性の違いだろう。

カインは、人類史上初めての殺人者と言われているものである。弟アベルに嫉妬して、殺してしまった。これはその死体の後始末をしようとしている所を、両親に見つかってしまったという場面だ。

罪に落ちた息子を呆然と見守る、父親アダムの目が悲しい。

愛する子供が罪に落ちたとき、あなたがたはどう思うね。罪に落ちたからと、軽々しく捨てられまい。償いをさせ、立ち直らせてやるために、あらゆることを、子供とともにやっていこうと、親ならば考えるはずだ。

子がなした罪は、親の荷でもあるのだ。
この絵の中のアダムの顔には、そういう父の顔が見える。

人間の心の影には、カインの悲しみがある。親を悲しませてしまった自分が苦しい。自分がいやだ。よい子でありたかったのに、と。

この苦しみから逃げて、自分が正しいことにするために間違った道を選べば、カインは果てしない闇をさまよい続ける。罪を受け入れ、正しい道で人の道を尽くせば、カインは父のもとに帰ってくる。

神話はその後のカインについて淡々と語ってはいるが、果たして彼の心は、どこにいったのだろうね。




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