読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

初めてのパリ(第6話)

2007年11月07日 | 海外旅行

パリ最後の食事
 昼食もしないで3時間くらいオランジュリーの絵に見入っていたので、すっかり疲
 れ果てて、持っていたお菓子などで少しごまかしたものの余りに中途半端な
 のでサント・トリニテ駅近くのレストランに入り牡蠣を食べた。中ぶりの牡蠣6個で
 9ユーロである。カプチーノ・パン、チップ込みで23ユーロ。まあ程ほどかも。
 ホテルで荷物を受け取り、TAXIを呼んで一路ロワッシー(シャルル・ドゥ・ゴール)空港
  へ向かう。
 出国は身柄と手荷物のセキュリティ・チェックだけで、簡単なもの。座席は運がいい
 というか悪いというか非常口の近くだ。座席の前が大きく開いているので
 窮屈な思いをしないで済んだ。時折眠ったり、本を読んだり、映画を観たりで
 定刻の20:00に離陸したANA 機は11時間ちょっとのフライトで成田に到着した。

 20分後にフランクフルトから到着した若夫婦とお互い無事だったことを現認し、
 「委細文」とばかりに立ち話で分かれた。
 聞けばあのあとドイツ南部にあるキムゼーという湖の湖畔にある義母の別荘で
 リゾート気分に浸って4日間を過ごしたとか。(羨ましか~)

     
        牡蠣とカプチーノ・パン                       いざ 成田へ


 パリの魅力 

  ロンドンは知らないが、ニューヨークやロサンゼルスも見て、東京はやはり大都市だ
  なと思った。全体にきれいだし、活気もある。都心は緑も多く夜景は洗練
  されていて、なかなか捨てたもんじゃないい。今の今までそう思っていた。
  ところがパリを見て、東京はここには敵わないと思った。ごみも散らかって
  いるし、やたらタバコを吸う人が多く、しかも我が物顔で吸殻を捨てる。
  15・6年前の日本じゃないかと思うほどだ。しかしそれを別にすれば、注意
  深く見ると皆んな目的意識を持ってきびきび歩いている。日本の多くの若
  者に見られるような、テロンテロンした歩き方は殆ど見られない。フランスは移民
  をかなり自由に受け入れてきたせいか、この所若者の就労不安で摩擦が
  起きて、移民受入れの見直しが問題になっているが、街を歩いていても地
  下鉄に乗っていても、確かにいろんな人種が生活しているな、ということが
  うかがえる。しかし、それで不安を感じることは少しもなかった。
  何よりも歴史的に重要なものはきちんと大事にしている。自らのまちの歴
  史に誇りと持っているからだろう。

  東京の建物はほぼ一様にコンクリートか石、金属とガラスといった素材による
  近代的な構造であるが、パリでは少なくとも中心部では何百年前からの
  建物で、全体に落ち着いた色合いで疲れない。広告看板に類した色彩の
  氾濫も少ない。
  もっともコンコルドからシャンゼリゼーを経て、凱旋門の延長線上に新しく現れた
  グランダルシュは近代的な高層ビル群が並び、パリ中心部とはまるで違う。
  モンパルナスビルも然り。旧きを守りながらも新しいものを積極的に受け入れ
  ていくのもまたパリなのかもしれない。
  思えば所詮日本は木の文化。何百年も経つ木造建築物は神社・仏閣な
  どに辛うじて残っているだけ。やたら火事が多く、常に新しいもので置き
  換えざるを得なかったこと、それを良しとしてきた国なのだから、ヨーロッパ
  の石の文化に国と同じ土俵で勝負しようとしてもしょうがない。とはいうも
  のの、旧きものを良しとし、その上に新しいものを築いていくというスタンス
  は常に忘れてもらいたくない。
  パリの歴史建造物に接すると、破壊を免れ、何百年も歳を経た建築物や
  構築物には、えもいわれぬ畏れを感ずる。彼らの存在には歴史を見て
  きた重みがある。権力に奢る王家・貴族を、虐げられた民衆を、血塗ら
  れた革命を、殺戮や和解を見てきた物言わぬ街の佇まい。文句なしに威
  圧感を覚えてしまうのだ。無念のうちに死んでいった人たちの怨念を感じ
  てしまうのは私だけだろうか。

  パリには、新宿・渋谷・浅草といった東京の盛り場にある猥雑な雰囲気とは
  また違った賑わいがある。夜の素顔はよくは知らないが画家、彫刻家、音
  楽家などの芸術家、作家、料理人、ファッション・デザイナー等々あらゆる分野の
  人たちが、先輩に言われる。「パリに来なさい。」、「パリへ行ってみなさい。」
  と。そしてパリで苦労して、何かを掴んで帰る。
  そうした掴むべき何かがあるところが東京にはないパリの魅力であり、魔力
  なのだろう。行きずりの旅人にもその程度の雰囲気は掴みとれる。
  わずか4泊5日の滞在に過ぎなかったものの、ツァー客では味わえないパリの
  魅力に接することが出来た。勿論ほんの上辺だけだし、もっと見たかった
  美術館や作品、是非行きたかった見所もある。
  また機会があれば再訪したいものである。
  (以上「初めてのパリ」終わり)
  

コメント
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