◇ 体力を維持するために
熟年同士の会話といえば、病気と孫に偏って、よほど的を絞らないとなかなか知的・文化的な
話まで到達しないことが多い。
孫がいない人がいると遠慮して孫の話はしないが、病気や健康の話ならまず当たり外れはな
い。「腰が…」とか「近頃前立腺の・・・」とかで、話が合うと、同じ悩みと戦っている同士という意
識が働いて和やかに話が進む。自分がいかに健康であるかをひけらかしたりすると、異分子
扱いされ嫌われるから気をつけた方がよい。
年寄り同士で強がったり威張ったりしても始まらない。
どういうわけか還暦を境に身体のあちこちに障りが出て、病院通いをすることが増える。
心臓だけは黙々と死ぬまで働き続けるが、沈黙の臓器といわれる肝臓でさえ、酒や過労やス
トレスが重なれば悲鳴を上げる。積年の悪行の咎め、良いこと悪いことの総決算と観念する
しかない。
歯はもちろん腰が痛い人は5人のうち3人はいるだろう。
肌に張りがなくなったの、髪が薄くなったの、髪が白くなったのという悩みは加齢の証拠で別に
誰に恥じることでもないので、こんなことでうろたえてはいけない。
さすがに肥満は男女を問わず自己管理の甘さを問われそうだし、何よりも生活習慣病の代表
格「糖尿病」になったりすると困るので、密かに食生活を変えたり歩いたりと努力はする。
風邪は万病の元といわれる。病が万もあるわけはないのだが、この歳になると風邪が引き
金になって合併症を引き起こすことが多くなる。だから人混みの多い電車の中や街中に出た時
は、出来るだけマスクをかけて予防する。本当は風邪をひいている人にマスクをして欲しいの
だが、そんな人に限って電車の中などで盛大に咳き込んだりしている。自衛するしかない。
また新型インフルエンザ流行の際にしつこく勧められた「手洗い」と「うがい」。これも余程習慣
づけておかないとついうっかりして忘れたりする。食後の歯磨きと同じように、風邪のシーズン
だけでなく、日常的に外出から帰ったら手洗いとうがいをすることを生活習慣とした方がよい。
先年東京大学柏キャンパス一般公開の一環として鹿屋体育大学学長の福永哲夫先生から
「ホーム貯筋術のすすめ」の講演を聞いた。毎日15分くらい続ける簡単な「ホーム貯筋術」で
加齢で衰える筋肉を維持できるとのことで、続ければこんないいことはない。 いまやっている
「腰痛予防体操」と「ラジオ(テレビ)体操」だって時たま忘れるほどの吾輩としては、まず続け
る自信がない。何しろこの年では放っておくと1年で1%筋力が衰え、寝込むと1日で1%筋力
減衰するという恐ろしい話だった。うっかり転んで、病院で治療を受けているうちにそのまま
ベッドから離れられなくなったという話の根拠はこれだ。こんな羽目に陥らないように今のうち
に貯筋をしなさいというお勧め。「貯金は減るが貯筋は増える」というキャッチフレーズは学者
にしておくのが勿体ないセンスだ。
ところで歳はとっても骨は鍛えられるという。カルシウムを摂るために小魚を食べ牛乳を飲む。
なるべく毎日シラスを食べる。大根おろしやほうれん草のおひたし等と和える。酒の肴で小魚と
くるみを和えたものを摂る。生来牛乳が苦手で、飲むとすぐ腸が異常反応するタイプなのだが、
ヨーグルトでもよいということなのでヨーグルトを飲む(食べる?)ことにした。普通のヨーグルト
は酸っぱくて、それでなくとも酢が苦手なのでいやいや飲んでいたが、ひょんなことで妻が
「カスピ海ヨーグルト」の種を入手したことで毎日苦も無く牛乳のカルシウムを摂ることが出来
るようになった。味はプレーンで、よく出来たカスピ海ヨーグルトはなめらかで食べ易い。
多少甘味があった方がよいのでマーマレードなどを加える。市販のジャムやマーマレードを戴い
た時などは加えてみるが、基本は自分で作ったマーマレード。これを作るのは吾輩の役目だ。
好きなのは甘夏か夏ミカンだが、季節性があるのでグレープフルーツやオレンジなどでも作る。
少し酸っぱい方が出来上がりがよい。大体甘夏などを5個くらい使うが、出来上がるまでに4
~5時間くらいかかる。半日以上掛かる仕事であるが、まず1回作ると4~5カ月はもつので、
その時は気合を入れて取り組む。
自家製マーマレードのいいところは、余り固すぎず、また柔らか過ぎず、ヨーグルト用の自分
好みの固さに作れることだ。
この間冬至の前日に、お向かいの家から柚子を一山戴いた。柚子湯のために数個、正月の
おせち用に数個、それでも沢山余るので柚子のマーマレードを作った。ほのかな柚子の香り
(皮を全部みじん切りにして入れた)がして良いマーマレードが出来た。柚子を下さったお向い
さんに一壜差し上げたら「まー、大好物!」とおっしゃったとか。来年から柚子ジャム代理製造
モードになる予感がする。
(以上この項おわり)