読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

久々に佐々木譲を読む

2011年05月07日 | 読書

牙のある時間」 著者:佐々木譲 2000年7月 角川春樹事務所刊(ハルキ文庫)

  佐々木譲は多彩なジャンルの作者で、人気の北海道警察ものなど警察小説に止まらず、「エトロフ発緊急電」、
 「ストックホルムの密使」など冒険小説、「五稜郭残党伝」など歴史・時代小説、バイク小説やホラー小説も書い
 ている。本書はそのホラー小説に属する。

  読み始めると「へえ、佐々木譲ってこんな本も書くんだ」と思う。主に警察ものを読んでいた小生としては意外
 感がある。余り情緒的でないところはいい。
  主要登場人物は絵描きと素人芝居の女優の夫婦、歳の離れた旧地主夫妻。
  舞台は十勝平野の広尾の近郊。

  本の構成は三部である。第一部では女優の女性が語る。第二部では絵描きの男性が語る。同一事象を当事
 者の二人が語りながら微妙に食い違いがある。果たして真相は。『藪の中』的ではあるがホラーなりの真相読み
 をしなければならない。
  「退廃と官能と狂気(本の帯の語り口)の中へ・・・」内容的には淡々とはいえスワッピング(この設定が重要な
 意味を持つ)の様子が再三出てくるので、映像ものなら間違いなくR-15に該当するといってよい。
  あまり書くと興を殺がれるし、謎明かしをしてしまうことになるので止めるが、絶滅したはずの「エゾオオカミ」
 と人間との係わり、狼男伝説、北海道という特異な背景設定で展開される、ひょっとするとあるかもしれない話。
 
 小生としては、ホラーは佐々木譲の本としてはあまり評価できない。

      

        (以上この項終わり)

 

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