12月12日、松本市勤労会館2F第4会議室で第3回憲法ゼミが行われ、19人が出席しました。
■第3章 国民の権利と義務(第10条~14条)
・レポーター荒井宏行さんの問題提起
「明治憲法の人権規定及び法律とその実態は?」「自民党草案では97条を放棄している意味は?」
・レポーター大内清彦さんの問題提起
「第11条現享有を妨げらない、草享有するに変わった意味は?」「現在および将来の国民に与へられる、が削除された意味は?」「基本的人権そのものの存在、範囲は?」「第12条、現保持しなければならないが、草保持されなければならないに変わった意味は?」「責任及び義務が伴うという縛りがかけられていることの意味は?」「公共の福祉から公益及び公の秩序に変わった意味は?」「第13条個人と人の違いは?幸福追求の意味、範囲は?」「第14条障害の有無は入れていいのではないか?」「差別はなくなっていない」
・参加者からの問題提起
「個人より国が上位を表している。個人から人に変わると国につながっていく」「アメリカの独立宣言にある抵抗権を認めてもいいのではいか」「全世界の国民に基本的人権が認められないと自由は保障されない」「明治憲法のもとではお国ため天皇のためと教育を受けてきた。現行憲法でそれがご破算になったのに、明治憲法に戻っているのではいか」「公益とは国益のことか」「総理大臣も自分も同じ基本的人権があるのか」「人は人とのかかわりの中で生きているから絶対的な自由はない。14条障害は個性だという考え方もあり疑問が残る」「保持しなければならないは、主体的な意味が強い」
・成澤孝人先生のコメント
13条を変えられることの意味は、すべての人権の総論規定なので、すべての人権が「公益及び公の秩序」のもとに服することになる。それが狙いだ。憲法学では「公共の福祉とは何だ」という議論をずっと行ってきた。人権は最大限尊重されなければならないが絶対ではない、他の基本的人権とぶつかったとき調整をしなければならない。したがって制約は最小限でなければならない。これが明治憲法からの最大の変化です。明治憲法は、例えば表現の自由を書いているが、治安維持法や国家総動委員法で制約ができるようにしている。日本国憲法は、基本的人権は法律より優位である。22条と29条に「公共の福祉」がある。それは財産権及び経済活動の自由は制約しないと弱者を保護できない。経済活動の自由を制約しても憲法違反ではないと言っている。その他の人権への制約は必要最小限としている。法律が経済活動の自由以外の人権を侵すときは、裁判所は場合によって法律を違憲とする。それが自民党の改憲草案ではできなくなる。公の秩序に人権が服するということになれば、法律が違憲となることは基本的にありえなくなる。だから明治憲法に戻すことになる。
12条の改悪も問題。人権は人を犠牲にした濫用はできない。全員平等に人権は保障されていなければならない。もし政府が間違ったことをやっている場合は積極的におかしいという責任があることを言っている。それを「自由及び権利には責任及び義務が伴う」としているが、憲法は政府が守るべきものであるであるから、憲法のレベルで国民の義務が伴ってはいけない。世の中の流れに対して文句を言う人は排除される危険性がある。
13条の「個人」、憲法学では会社の人権についても議論がされていたがそれは間違っているとの根拠となっている。家族や社会の意見に対しても個人として主張できるが、「人」に変わるとそうではなくなる。
新しい人権は「幸福追求権」から出てきている。何でも新しい人権ではなく「個人の尊重にとって必要な人権に限られるべき」というのが奥平先生や樋口先生の考え方。そこで「プライバシー権」「自己決定権」が13条から認められている。「憲法にプライバシー権が入っていないから変える」というのは間違い。
14条「障害」については、憲法学では「社会的身分」に入れて考えている。本当に平等かという問題はあるが、国が差別しているということはない。今起きている差別の問題は社会の問題であって法律で考えればいい。14条は13条とセットで、個人を個人として認めず一つの集団でレッテル貼りして差別することは、個人の尊重に反する。
■第15条~17条
・レポーター八幡雄二さんの問題提起
「長く日本に住む外国人をひとくくりにせず多様な意見を持つ一人ひとりとして選挙に参加してもらうのは民主主義の一歩前進となる」「選挙は議員や政権を担当している与党に対してすべて政策に白紙委任しているわけではない。よって国民世論と政府の政策に大きな不一致がある場合、政府は国民の意見を聞かなければならない」「民主主義の実現のために国民は常に監視の姿勢と創造する力を持ち続けることが必要。
・成澤孝人先生のコメント
「全体の奉仕者」性は公務のレベルの高さに比例する。「公務員選定・罷免権」は、昔は教育委員を選挙していた。国会議員は直接民主主義性になるので罷免権は含まないと考えている。
改憲草案では「主権の存する国民」という言い方で完全に在日の皆さんを排除することになる。天皇を主権とする国家に在日の人は入らない。公務員からの排除も想定しているのではいか。旧植民地国の人には選挙権を認めるべきだ。国籍があったにもかかわらずサンフランシスコ条約の後奪った。
(文責:中川博司)