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20250303 「有機農業推進に向けた最近の情勢について」講演会

2025-03-09 07:07:03 | 食・農業

長野県議会改革信州政務調査会が主催して「有機農業推進に向けた最近の情勢について」農業ジャーナリストで元長野県職員の吉田太郎氏からお話を聞いた。

 

(1)有機農業をめぐる国際情勢 自給有機で地域経済再生

①EUは2030年までに農地の25%を有機栽培に転換する計画。スイスでは、国土交交通省が管轄し国土の保全と安全保障のため農家に所得補償をしている。年収は1400万円。

②韓国ワンジュ郡においては、小規模家族農家が生き残ることを目的に農業協働組合をつくり、6次産業化、加工食品とレストランで農家に所得を確保している。ローカルフード条例をつくり、全国のモデルになっている。また、学校給食センターにおいて小規模家族農家が生き残ることを目的に市の財団として農家から直接農産物を確保することで、新規就農者がいる。

③台湾では、日本から学び里山イニシアチブを展開。遊休農地の活用とと鳥獣害被害を都市農村交流で防ぐとともに、農産物の高付加価値化と農産加工(豆腐)で、消費者の理解促進している。10年前から週に1回は全国の小学校で無料有機給食を開始している。IFOAMの大会での農業大臣が「台湾は欧米よりも高温多雨で病害虫雑草が多いので、自然農法をタイから学び、民間ベースで有機稲作3.4%(2%が認証有機)に拡大してきた。ちなみに日本は0.7%。

④タイでは、近代農業では半分近くが流通経費でなくなり、2〜3割程度が資材費で失われていた。森林と水産業とセットで有機農業に換え、直売で流通経費は皆無に近く、有機であるためにほとんど資材費もいらなくなった。借金で出稼ぎにいくか、身売りをするか、餓死しかねない小規模家族農家が、野菜等の直売だけで借金を返済し、こどもを大学にまで進学させることができるようになった。市場委員会がオーガニックで確かに生産されていることを確認するので、消費者は信頼している。

 

(2)国内情勢

①私立学校で有機学校給食が進んでいる。筑紫学園では校長のトップダウンで、小・中・高で導入。長野県佐久穂町大日向小学校では、有機農家と栄養士が連携して有機学校給食を実現している。

②長野県松川町、遊休農地の解消と定年帰農者を町がマッチングして有機農業をはじめる。公共調達で学校給食に使うコメ・ジャガイモ・ニンジン・ネギ・タマネギに特化して栽培。県の元気づくり支援金をつかって、自然農法国際研究所から技術指導を受けた。クローズアップ現代で取り上げられた。

③埼玉県小川町では、新規就農者を中心に有機栽培を拡大。現在、302haのうち19%にあたる57haで有機栽培を行っている。266経営体のうち16%にあたる42経営体が参画。

④大分県臼杵市は、森林、里山、海を一体的に有機農業で守る取り組みを行っている。本物の「ほ」の字で、独自認証を行っている。

⑤福岡県大木町では、液肥をつくり農家に還元している。

⑥今治市では、学校給食センターで食べるパンの原料となる小麦を輸入物から地産地消特別栽培に変えて地域循環経済に転換。コメも特栽米に。

*無農薬栽培は、多様性をつくりだす。例えば、ウンカが大量はっせしても天敵となるウンカシへンチュウも共生していて被害は出ない。

⑦長野県内のスーパーでも大治とのコラボで島根県の有機栽培が売られているほか、JA東とくしまなどが、流通に有機生産物を乗せている。

⑧茨城県JAやさとは、環境保全型農業をすすめるため農協内に有機栽培部会をつくり、新規就農者2haの農地と2年間の研修で有機農家として独立させている。

⑨都道府県の取組みも各地で進んでいる。茨城県では、知事の有機宣言により常陸大宮市などで有機学校給食のためにJAを巻き込んで有機農業が大規模に展開されている。群馬県でも、知事のトップダウンで有機農業が急速に展開し始めている。

(3)質疑

・「有機農業でやっていけるのか、誰が買ってくれるのか」という質問に、「学校給食など公共調達からはじめることが有機農業を推進することにつながっていく」と回答。

・有機農業と環境の関係について質問が出て、「カーボンマイナスができるのは農業だけ」と回答。

(4)まとめ

・改革信州政務調査会として取り組んだ学習会だが、他会派や県の関係部局にも参加してもらい、有機農業を推進していくことの重要さを共有化できた。

 

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