■自然災害に緊急事態宣言は必要なし
自民党「憲法改正草案」(以下「改憲草案」に、新たに第9章緊急事態が起草され「我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱などによる社会秩序の混乱、地震などによる大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる」としている。すでにマスコミが東日本大震災で被災した自治体の首長に実施したアンケートでは「災害対策基本法や災害救助法」で十分である回答を得ており、大規模自然災害をいれることで国民の理解が得やすいと考えていると思われる。
■内閣が勝手に法律を制定できる
この緊急事態条項の最大の問題は、緊急事態宣言のもとで内閣が法律と同じ効力をもつ政令を制定し、財政支出、財産処分、地方自治体への指示ができる点である。ここがナチスの「全権委任法」と言われる所以であり、少なくとも緊急事態宣言は百日間は有効であり、この間に新たな法律をつくることばかりではなく、恣意的な法律の改正、例えば今度国会で審議される共謀罪の適用範囲を広げることなどが勝手にできることになる。
■緊急事態指示順守義務
また、緊急事態宣言下においては国民は、「国その他公の機関の指示に従わなければならない」とし、国民の基本的人権も制約をする。将来、憲法9条が改悪されて国防軍が設置されれば、国防軍は当然公の機関であり、軍隊の命令に従わなければならないし、現憲法下でも自衛隊を公の機関とすれば、自衛隊の命令に従わなければならない。
■緊急事態宣言は解除されない
緊急事態宣言は、必要がなくなった場合や国会が承認しない場合、あるいは議決をしたときに、解除されることになっている。しかし、現在のように自民党が単独で過半数を持っているような状況では、緊急事態宣言を解除しないことは容易に考えられる。この状態に疑問をもっても優越権をもつ衆議院は解散しないことになっているので、緊急事態宣言を解除する絶対的権能は内閣に一任されている。
■原子力緊急事態宣言
現在、日本は原子力緊急事態宣言下にあり、放射能汚染がひどい地域は、居住・移転の自由が制限され、あるいは勤労の権利も奪われている人もいる。もっとも、ひどいのは追加の被ばく限度を1ミリシーベルトから20ミリシーベルトにあげて、帰還を促していることである。
■沖縄高江で法律を無視する機動隊・防衛局
沖縄高江で建設工事が強行されているオスプレイの発着訓練基地では、勝手に県道を封鎖し、勝手に国有林を伐採し、勝手に私物を処分し、勝手に逮捕・拘束するなど法律を全く無視した暴挙が繰り広げられている。まさに緊急事態条項の先取りではないか。憲法に緊急事態条項を新たに起草する必要はまったくありません。