リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

マスタークラス in Nagoya

2006年04月24日 16時15分47秒 | 音楽系
コンサートの翌日は、ホピーのマスタークラスが名古屋市内で開催されました。場所は市内北区のミューズサロンです。10時少し過ぎにホピーをホテルに迎えに行きましたが、ちょっとお疲れの様子。火曜日に来日して、コンサートを3回こなし、今日のマスタークラスですから、それもむべなるかな。

「ショージ、今日のパーティーはちょっとごめんしてくれないかい。マスタークラスが終わったらすぐホテルに戻りたいんだ」

って、ちょっと弱気発言が。(笑)終わったあと簡単なお茶会程度ならオーケーということなので、その方向に。

車の中では、ホピーが「これを聴こう」ということで出してきたCDが、福田進一のCDです。過日行われた福岡でのコンサートのときに、福田さんが聴きに来ていて、最新?のアルバム(ヴィラ・ローボスとポンセの作品集)をプレゼントされたとのこと。今日は平均律第二巻第6番の替わりにヴィラ・ローボスのスコットランド風ショーロが流れてきました。

10時20分すぎに会場に到着。お店では、ホピーが弾くバッハの無伴奏フルートのリュート編曲のCDが流れていました。
ホピーは結構真剣に、
「ねぇ、これって、誰が演奏しているの?」
って店の人に聞いていましたけど。(笑)

マスタークラスは定刻通り、11時に開始しました。参加される方は、ルネサンス・リュート2名、バロック・リュート2名、ソプラノ1名、バロック・ヴァイオリン1名、クラシック・ギター1名という多彩な顔ぶれ。

ヨーロッパで、いくつかのマスタークラスに参加しましたが、それらと比べて掛け値なしに今回の名古屋の参加者のレベルや多彩さはトップクラスじゃないかと思います。日本の古楽の層も本当に厚みを増してきたもんですね。

あと驚いたのが、参加者の皆さんの語学力です。一応、通訳を仰せつかったんですけど、受講者の様子を見ながら通訳をし始めたんですが、なんかあまり必要がない感じの人が多かったので、時折必要なことだけ日本語に直すやり方で行きました。多分会場にいた人の英語力は平均的な日本人のグループよりは相当上だとは思いますが、それにしても日本人の英語力って伸びたんですねぇ。

でも、必要なことだけ訳す式の通訳って実はすごく難しいことがやっていてわかりました。英語を聞いて理解するのとそれを日本語に直すのは実は全然異なることで、日本語と英語を言ったり来たりで疲れるし、しかも分量が多くなるともう忘れてしまいます。それとどのポイントで日本語を入れるかのタイミングも難しいです。参加者の何人かには逐語的に絶えず日本語訳をそばで言う式の通訳をしましたが、こちらの方がずっと楽でした。こんな長丁場の通訳ははじめてだったので、いろいろ勉強になりました。(笑)

レッスンで、私は二人の方の通奏低音を仰せつかりましたが、私の分のレッスンも少し入り(というか、行きがかり上入らざるを得ないですよね)ちょっと得をした感じでした。ま、役得というところでしょう。

ホピーのレッスンは、ダウランドのファンタジアから、ビーバーやヘンデルの通奏低音付きの作品まで本当に自在に適切なアドヴァイスがあり、参加された方もきっと満足されたと思います。これだけ守備範囲の広い音楽家もそうはいないんじゃないかと思います。

受講生、聴講生のみなさんは、関西や関東の方からもお越し頂きました。中には30年ぶりくらいにお会いした懐かしいかたもいらっしゃいました。私にとっては、各地のリュートの仲間、旧知の友人らとともに偉大なる師匠と時を過ごした、まるで自分の音楽人生を水平的にも垂直的にも凝縮された時間でした。またホピーの次回の来日の際にこういう会が持てたらと思っています。