リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

マタイ受難曲

2006年04月09日 22時25分16秒 | 音楽系
BCJのマタイ受難曲行ってきました。会場のしらかわホールはほぼ満席。すごい人気ですね。来ているお客さんはいわゆる古楽だから来ているのではなくて、BCJを聴きに来ているみたいです。古楽関係の人は(ってそんなに名古屋にはいないでしょうけど)あまり見かけませんでした。もう古楽、古楽って言ってる時代じゃとっくにないんですよね。団塊の世代かそれに近い人で昔から、「古楽」やっていると思っている人は、頭を切り換えないといけませんぞ。

今回の演奏は初期稿に基づいて、鈴木雅明さんの考えも取り入れたものですが、中規模のコーラスが2組あって、子供のコーラスも入ったものに比べるとずいぶんさっぱりした感じでした。ガーディナーのCDに聞き慣れた耳からすると、少しさっぱりしすぎかも。私はこんなのの方が好きですけどね。

第57曲は一般的に演奏される版のヴィオラ・ダ・ガンバによるオブリガートではなく、リュートのオブリガートです。今日はじめてこの演奏を聴いた人は、ひょっとして今度一般バージョンのガンバオブリガートを聴いたら、リュートの方がいいじゃん、って言うかも。こんなにいいのに何で次のヴァージョンでバッハはリュートをガンバに替えてしまったんでしょうね。

ヨハネでもそうですが、キリストが処刑されていくあたりのクライマックスの部分にリュートオブリガートのアリアが来ています。そこだけは静寂が支配しますが、かえってそれがクライマックス感を強調することになります。この様な重要な場面にリュートを選んだのはさすがバッハは慧眼ですねぇ。

リュートの今村さんは最初から入って、何曲かアリアの通奏低音もやっていました。彼はヨーロッパでオペラなどの通奏低音の経験が豊富な手練れの奏者です。大変好演でしたので、名古屋の聴衆にもリュートによる通奏低音の良さをアピールしたのではないかと思います。彼は今月18日に名古屋のスタジオ・ルンデでソロコンサートを行いますので、時間がある方はぜひお出かけ下さい。

終演後、コーラスに入っていたテナーの石川さんにあいさつして(彼とはバーゼルでよくリュートソングをやりました)今村さんを名古屋駅まで送って行きました。彼は今日は名古屋泊まりじゃないので、ちょっとあわただしかったですが、駅弁を売っているところまで案内しました。ふと見ると、エヴァンゲリストも駅弁を買っていました。(笑)