リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

S.L. ヴァイス:メイキング・オブ・ミッシングパート(14)

2020年10月07日 12時40分21秒 | 音楽系
第2楽章フーガの28~33小節です。



28~30小節は2度→6度による転調を繰り返してヘ長調に向かうための経過的な箇所です。転調の流れをよりはっきり示すために、ヴァイオリンがあまり饒舌にならないようにしました。赤で囲んであるフレーズを交互にやり取りします。(このフレーズのスタートは27小節目の3拍目からです)30小節目のヴァイオリンパート1,2拍目に出てくる付点のフレーズは(青で囲んであるフレーズ)、リュートパートの38小節目1、2拍に出てくるフレーズを使いました。

2016年の復元版ではほぼみっちりヴァイオリンパートを書き込んだのですが、それではリュートが埋没しがちです。今回の版では、ヴァイオリンのパートは可能な限り黙ってもらってリュートのパートがはっきりと目立つようにするというのコンセプトです。

ですから、30小節目後半からリュートパートに現れるテーマの再現(緑の波線部)は、ヴァイオリンパートはお休みです。2016年版ではここもぎっしり書き込んだのですが、おおきな音がでる楽器(ピアノとか)なら何とかなるでしょうけど、実際に演奏してみるとこの部分はせっかくのテーマを弾いているリュートは埋没しています。



ただいつまでもお休みというわけではなく、32小節目後半からはテーマを弾いてもらいます。少し前のエントリーで示したように何でも音を書けばいいというわけではなく、こういう風にメリハリを付けたほうが、リュートの音も聞えるし、テーマもくっきりと表現できるし一挙両得というものです。
(つづく)