リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

フェルメール作品の絵解き

2020年10月08日 11時26分23秒 | ウソゆうたらアカンやろ!他【毒入注意反論無用】
先日某ビールメーカーが提供している美術関連の番組でフェルメールの絵が紹介されていました。フェルメールと言えば当ブログでときどきトピックになるのですが、今回もいい「エサ」がでてくるのではと、注意深く拝見させていただきました。



これはロンドン・ナショナル・ギャラリー所蔵の「ヴァージナルの前に座る女」という作品でフェルメール晩年の傑作という風に学芸員の方が説明されていました。国立西洋美術館でナショナル・ギャラリー展が今月18日まで開催されていますのが、その展示作品のひとつだそうです。画面には、楽器が描かれているのですが、「左下は、ヴィオラ・ダ・ガンバ、女性が演奏しているのがヴァージナル」と学芸員氏。

「そして、右上には画中画があります。これは「取り持ち女 (ディルク・ファン・バビューレン作)」と同じ構図の絵です。・・・描かれている楽器はリュートが描かれています」ふむふむ。

「リュートというのは小型のギターです」えーーー!!!

案の定出てきましたね。(笑)50年前ならいざ知らずまだこんなことを言っているんですねぇ。リュート=小型のギターでも絵の解釈には問題はない?いえいえ決してそんなことはありません。ディテールの積み重ねこそが重要です。学芸員氏、この程度の浅い知見では困ります。

昨年同番組やフェルメール展、関連出版物でこんなこともありました。(当ブログでも取り上げました)



この絵の画面中央左下の椅子に置いてある楽器が、上記の解説ですべてリュートになっていたのです。これはリュートではなくシターンです。フェルメールは「恋文」という作品の中でもこの楽器を描いています。それにしても日本の美術界の知見の浅さはなんなんでしょ?一事が万事、音楽関連以外のことは分かりませんが、他の解説も実は結構ナンチャッテなのかも。

私は何も音楽の専門的なことを知っているべきだと言うつもりはないんですよね。カラヴァッジョの作品に描かれている楽譜の曲名は?なんていうのは私らの分野でしょう。(これも当ブログでとりあげました)美術家であっても絵解きをする以上は楽器の名前くらいはきちんと押さた上でやってもらわないと。