リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

S.L. ヴァイス:メイキング・オブ・ミッシングパート(18)

2020年10月19日 17時33分50秒 | 音楽系
今回から第3楽章に入ります。第3楽章Amorosoのリュートパートはほとんど通奏低音の伴奏という感じの書き方です。少しだけリュートに旋律的な動きがみられるところがありますが、それ以外にもリュートを聴かせるところを作っていこうと思います。

まず1~6小節目まで。



ヴァイスが書いたバスと通奏低音のリアライゼーションにマッチするメロディはいろんな形が考えられると思いますが、モチーフを整理することがとても重要です。

モチーフは、1小節目の形、1拍目に付点を伴った2小節目の形、2拍目に付点を伴った3小節目の形を使っています。いずれもサラバンドによく出てくるリズムモチーフです。

4小節目のファの音はレでもいいのですが、リュートのパートには根音と5度の音(レとラ)しかないので、ここは3度音のFにしました。またファにすると次の5小節目のソから短7度下がることになりより印象的な感じになるのではと思います。

6小節目のミの音はとても意味のある音だと思います。というのも、6小節目の3拍目のバスはソで、リュートパートに書かれている音はソとシ♭です。バスがソであと書かれている音がシ♭の場合、どういう和音が考えられるでしょうか。次の8小節目の冒頭の和音はF durの主和音ファ、ラ、ドのド(5度音が省略)であることを考えると、ソ、シ♭、レではなく、ソ、シ♭、ミ(バスに対して6度のミ)が自然です。

つまりこのミを通過してファに至るラインが必要だと思います。ですから、3拍目は四分音符のミでも、八分音符でレミでも可能です。和音的には7度にあたるファからミという線もここだけ見ていればいいサウンドですが、リュートパートの6小節目2拍目の内声部にファ#がありますので、残念ながら不可です。

ということで旋律のいかんは問いませんが、6小節目の3拍目から7小節目につながる旋律はファの導音にあたるミが含まれるラインが自然です。