1964年に発表された小説「楡家のひとびと」は北杜夫の代表作です。当時はテレビドラマ化もされなかなかの人気を誇った作品でした。私もその流れに乗って単行本を買って読んでみました。
新潮社から出版されたその単行本は今も持っていますが、箱に三島由紀夫の推薦文が書かれています。小説を絶賛する見事な文章なのですが字体と仮名遣いが昔のスタイルで書かれています。(小説自体は現代の字体、仮名遣いです)この三島の推薦文を読んだとき、勝手に自分のルールを押しつけるなよな、と思ったものですが、三島の立場でよく考えてみるといわゆる旧仮名遣いでずっときていたものを突然勝手に変えやがって!ということなんでしょう。
今も活躍していますが、「キンタロー。」という芸人が出て来た頃、なんで「。」がついてるの?なんか意味があるの?「キンタロー」ではだめなの?なんて思いましたが、そういうことを考えさせるために芸名の終わりに「。」を付けてみたのかもしれません。
アニメ「君の名は。」も同様の感じでしょうか。ただ「君の名は。」の場合は助詞がついていているので文(問いかけとか詠嘆の省略された文)の感じがするのはより明かです。「。」は文の終わりにつけるという点では別にルールを変えているわけではなく、句点をつけることによって「君の名は」が文に感じられ、タイトルとしては新鮮に見える効果を狙ったのかもしれません。
芸名の「キンタロー。」は固有名詞につけただけなのですが、「。」によって呼びかけの文みたいにも見え同様の心理的効果を与えているのかも知れません。このスタイルに後続する芸人はあまりいませんが、「りんたろー。」という芸人さんも出て来ていますよね。
この「キンタロー。」や「りんたろー。」という表記は単独ならそれほど問題は起こりませんが、より長めの文の中で使うと少々混乱を起こします。「りんたろー。とキンタロー。がナントカ番組で共演した。」だとちょっと気にはなります。でも彼らはよく知られたご人物なのでそれほど問題にならない感じがします。ただ一般的には句読点の用法を逸脱するのはよい傾向とは言えません。当ブログのタイトル、リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」のスリードットはまだいけそうですが、リュート奏者ナカガワ。の「その手はくわなの・・・、」なんて書いたらだめでしょう。
「。」の代わりにピリオドというのも見たことがありましたし、日本語の読点「、」の代わりに英語のコンマ「,」というのも何と公文書で見たことがありました。英語で使う読点「;」「:」を使ったり句点を全く使わず読点のみの文章も見たことがありますが、勝手なことをしてはいけません。
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