リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

5つの「小」

2020年11月20日 14時19分26秒 | 日々のこと
新型コロナの感染が急拡大しています。私の住んでいる三重県でも一昨日の17名につづき昨日は21名の感染者が出ました。今日はどうなるんでしょう?

東京都の小池知事は、感染予防として「会食」に的を絞った方策を打ち出しました。それが5つの「小」です。「少人数」「小声」「小一時間」「小まめ」「小皿」の5つです。プラス「こころづかい」も入れています。私からもうひとつ、by「小」池。(笑)

感染経路のかなりの部分が家庭内や職場の感染ということで、以前よく話題になった夜の街での感染は少なくなっているようです。でもよく考えると家庭とか職場の感染というのは要するに、そこの前にどこで感染したかがわからないということですよね。感染経路不明とはいうものの「会食」あたりが一番クサイというので、小池都知事は5つの「小」を打ち出したのでしょう。

「会食」とひとくくりにしていますが、食事会、飲み会、忘年会、ママ友の集まり、カラオケなんかが該当するのでしょうか。そもそも多人数では集まらず、少人数でも人前ではマスクをして黙っていることが肝要ということです。感染対策のある専門家はマスクはパンツといっしょだ、人前でとるものではない、と分かりやすいことをおっしゃっています。政府の分科会の尾身茂会長は今は「ふんどしを締めなおすときだ」っておっしゃいましたが、こちらは女性や若い方にはちょっとピンとこない言い方だったかも知れません。

S.L. ヴァイス:メイキング・オブ・ミッシングパート(29)

2020年11月19日 16時35分32秒 | 音楽系
第73小節~90小節までです。



前回の72小節目から始まったリュートのフレーズをヴァイオリンとやりとりします。(赤で囲んだ部分)このフレーズは調を変えて何度もやりとりします。バスは音階的なバスでこれまた調を変えて何度も繰り返します。同じフレーズを何度もやりとりするのは単調になるかもしれないので、ヴァイオリンのフレーズは全く別のモチーフを使ったフレーズを書こうかとも思いましたが、それにしてもその別のモチーフのフレーズはヴァイオリンのパート内では繰り返すことになるでしょうから、そういうやりかたは止めて譜例のような何度も繰り返すパターンにしました。このように何度も同じパターンを繰り返すのはとても印象的で、結構はまってくるのではないでしょうか。



赤のパターン(イ短調)は両パート合計で4回、青のパターン(ニ短調)は4回ですが、緑(ハ長調)は3回で、今度はヴァイオリンから始まります。次に続く黄土色のパターン(ヘ長調)、これも3回です。



このように72小節目~86小節目はパターンの繰り返しで構成されていますが、繰り返す回数を3クール目から減らし、それによってフレーズを主導する楽器を交替することで単調さを避けています。

86小節目からはリュートソロのフレーズが始まりますがこれは繋ぎ程度のごく短いものです。88小節目ではモチーフが少し変わりますので、ヴァイオリンにも6度上のフレーズを弾いてもらうことにしました。ヴァイオリンと一緒に弾くとリュートは埋もれがちになりますが、ここはヴァイオリンの音域も低いので大丈夫でしょう。

そして90小節目のアウフタクトから第4楽章の冒頭のテーマが現れます。ただし91小節目以降に全フレーズが現れるのではなく断片的です。

(つづく)



アップルの意地悪?

2020年11月18日 15時32分02秒 | 音楽系
最近ソプラノの増野由香さんとコラボ作品をオンラインで制作するべく、いろいろやりとりをしています。まだ公開できる段階ではありませんが、とりあえずSally Gardens を試しに作ってみました。

発音のアドバイスなんかもiPhoneでビデオを撮ってそのリンクを送って彼女に見ていただいています。でもリンクを作るまでにちょっと手間取りました。

iPhone の中にあるビデオクリップをクラウド(Dropbox)に上げる必要があるのですが、まず最初にやってみたのが、iPhoneのメニューにある「Dropboxに保存」ですが、11分くらいのビデオだとダメ見たいです。短いのはOKでした。さんざん待たされた挙句、できませんといわれるのはつらいです。

ではということで、今度はケーブルで接続してみました。これがなかなか不安定で、PCの方でiPhoneを 認識したりしなかったり・・・存在を認識してもフォルダがなかったり、フォルダがあっても中身が空っぽだったり、意味不明のメッセージが返ってきたり。さんざん時間の無駄をさせられて、わかったのはできないということです。

最初からこれでやっておけばよかったのですが、次に試したのはApple iCloudです。これはすんなり行きました。iCloudは5Gくらいでしたか、少しは無料ですが、それ以上になると月何円か払ってくださいというサブスクになります。

Dropbox行は一応できるように見せかけてはいますが、条件があって使いづらくしてあり、結果的にiCloudを使うよう誘導されたような感じです。そして一定の容量を超えると有料になりそこでがっぽり儲けるという仕組みが見えてきます。最初から他社のクラウドはダメですとは言っていないけど、使うのが不便なようにして意地悪するなど、中々巧妙です。しっかりしたビジネスモデルを持っています、アップルは。まぁ普通の言い方ではこういうのはガメツイというんですけど。

Sally Gardens のオンラインコラボ自体はすべてPCで作るので特に問題なく試作品が完成していますこのあと「本番」の録音を完成させて、あとはいわゆるプロモーションビデオと同じような手法で制作してYouTubeで見られるようにする予定です。詳しい制作過程は公開できるようになったときにお知らせしましょう。

我が家にもやって来ました!

2020年11月17日 14時08分13秒 | 日々のこと
我が家のWindows 10 コンピュータのWindows Update にもうすぐversion 2004 がインストールされますよ、という旨の表示がされたのは9月の終わり頃のことでした。



その後突然この表示が消えましたが、別にversion 2004 がインストールされるわけでもなく、マイクロソフトのサイトを覗いてみるとversion 2004の不具合はずっと残ったままでした。

それ以降コンピュータを終了するときはできるだけWindows Update を確認するようにしていますが、ずっと何も変化がない日々が続いていました。ところが昨日急に(別に急になったわけではなく時期がきたのでしょうが)表示が変わり、version 20H2 のインストール準備ができました、になっていました。version 20H2は2004の次のバージョンで最新版です。version 1909 から一足跳びに20H2です。

ただOS を新しいバージョンにすると不具合が起こりがちなので、どうしようかと思いましたが、まぁ向こうからできますよって言ってくれているので乗ることにしました。

バージョンアップには少し時間がかかりましたが、無事すんなりと終了、Windows 10自体は普通に動いています。どこが変わったのかはぱっと目ではメニューに表示されるフォルダの色が少しきれいになったくらいで、前と同じです。内部的にはいろいろ変わっているらしいし、確か標準のブラウザが新しくなったらしいですが、私としてはChromeを使っているのであまり関係ありません。

いくつかのアプリを立ち上げてみましたが、普通に起動しています。気になったのは、ミュージックインターフェイスDiscrete4のドライバです。でもこれもDiscrete4自体は問題なく作動します。これを使っているSequoia 11やStudio One5などのDAWも問題ありません。あとTEACのインテグレテド・アンプやAKGのUSB接続のマイクもOKです。珍しく何のトラブルもなし!と思ったら実は・・・

何も問題はなかったと思って、YouTubeでSequoiaのチュートリアルでも見ようかと思いYouTubeにアクセスして、ビデオクリップを開けると、なんとエラーが出て開くことができません。サウンドドライバはDiscrete4でしたので、それををTEACのアンプのドライバに切り替えるとこちらは大丈夫です。まぁいつもTEACで使えばいいのでしょうが、ちょっとすっきりしません。

問題を整理すると、DAW+Discrete4は〇、Sibelius+Discrete4も〇、YouTube+TEACも〇、YouTube+Discrete4だけがペケです。何が気に入らないんでしょうねぇ。この解決法はひとつしかないでしょう。Discrete4のドライバを最新のものにすることです。はい、結果としてはその通りでした。ただあちこち再設定の必要が出てきてちょっと面倒ではありましたが。

私の場合はあまり一般的ではないものを繋げていますので少しトラブルが出ましたが、一般的には安定的にアップグレードできるのではないでしょうか。OSは最新のものを使うというのが安全・安定・安心の第一歩です。

Sequoia

2020年11月16日 15時19分07秒 | 音楽系
Sequoia というと木の名前だったりトヨタのクルマの名前だったりしますが、ここでお話するのはDAWのSequoiaです。DAWはディー・エイ・タブリュとかダウと読みますが、デジタル・オーディオ・ワークステーションの略で、コンピュータで録音・編集したり、音楽制作をしたりするアプリのことをいいます。録音をテープで行うことはなくなってしまった昨今ですが、業界で標準と言われているDAWがSequoiaです。日本ではPro Toolsが業界では標準と言われていますが、これはある特殊事情でそうなってしまったらしく、欧米のスタジオ特にクラシック音楽を録音・編集するところではSequoiaが標準・定番だと言われています。

10年ほど前にドイツのスタジオでバッハ・ヴァイス作品集第1集、第2集を録音しましたが、その時使用したDAWもSequoiaでした。録音技師のヤン・ザチェック氏がスタジオのブースで、あれこれスイスイっとテイクをいじっているのを見ていて、よし私も自宅でこれを使って録音・編集してみよう!なんて軽く決意しました。

軽く決意したもののSequoiaはとても高価なアプリで、すぐに手は出せませんでしたが、CDの仕上がりを聴くとやはりこれはなんとか買わねばと思いました。もっとも録音の質はDAWだけで決まるものではなく、マイク、マイク・プリ、スタジオの響き、そしてエンジニアの音楽性など様々な要素がからんでいるものです。でもやはりまずDAW からということでキヨブタでSequoia 11を買ってしまいました。

ところが買ったはいいものの800ページに及ぶマニュアルを見ていったいどこから手を付けていいのやらわからず、しばらく塩漬け状態でした。3年くらい前にふと思いついて、またインストールしてみましたが(買ったときからコンピュータが更新されていましたので)コンピュータの不具合があったのでしょう、インストールできませんでした。これでは大損でがっかりでした。そして今年の夏8号機を新たに新調した際にまたインストールをしましたら、今度はすんなりとインストールできました。でも立ち上げてみても、他のDAWのようにハウツー本があるわけでもなく、情けないことにただ眺めているだけでした。(笑)

最近YouTubeを見ていましたら、なんとSequoia の公開講座みたいなものを日本の某音大主催でやっているビデオクリップがありました。内容がクラシック音楽の録音・エディットがテーマで実際にそれをやって見せるというものでした。そうそう!こういうのですよ、私が必要なのは。必要な全てがそこで語られていたわけではありませんが、それを糸口に別のYouTubeのビデオクリップも見たりしてほぼ必要なことはすべてわかってきました。とっつきにくそうに見えていましたが実は他のDAWよりはるかに明快で使いやすく、特にビートで区切られていないクラシック音楽の録音・編集には最適だということがよくわかりました。同じことをStudio One 5というDAWでやってみたことがありますが、ビートの音楽ではないリュートの録音では扱いづらく精度に欠けるので困っていたところでした

で、早速一曲録音してみました。作者不詳のシャコンヌです。シャコンヌといって初心者向けのかわいらしい小品です。私のバロック・リュート教本にも掲載されている曲です。何テイクかとってみて、演奏中ノイズが入ってところなどを編集してみました。

機材は、Discrete 4(ミュージック・インターフェイス), AKG451Bx2(マイク), Sequoia on Windows 10(録音、編集、音場処理), Sound Forge14のノーマライゼーションです。リンクをアップしましたので、興味のある方は聴いてみてください。完全な編集はしていないので、少しお聞き苦しいところもありますがご容赦ください。本式にアルバムを作るにはまだこの先、マスタリングという作業をする必要がありますが、そこまではしていません。

Chaccone
出典: Österrichische Nationalbibliothek, MsHs17706 p.2
使用楽器:Lars Joensen 13 Course (based on Sebastian Schelle )
弦:バス弦=Aquila Loaded Nylgut, 他はナイルガット、カーボン、ナイロン

M1

2020年11月15日 14時21分53秒 | 日々のこと
先日アップルが MacBook Air, 13inch MacBook Pro, Mac mini の新機種を発表しましたが、これまでと大きく方向転換をして、搭載チップをインテル製から自社設計のものにしています。新搭載のチップはApple M1と呼ばれて、CPU(中央演算装置)、GPU(グラフィック演算装置)、Neural Engine などがこのチップにまとめて搭載されているそうです。(ただし、MacBook Air 以外はインテル製チップも選択できます)

このApple M1チップは同じく自社設計のチップが使われているiPhoneシリーズと互換性があるので、iOSのために開発されたアプリが直接MacOASで動くことになるそうです。もちろん何らかの制限はあるでしょうけど、これはMacOSにとっては大きな資産を得たことになります。

MacOSではBoot CampでWindowsが走りWindowsアプリが動作しましたが、M1チップ搭載機ではそれができなくなります。音楽系のアプリは今ではほとんどが両対応ですが、FL StudioやSequoia(知る人ぞ知るプロ御用達の定番アプリです)はWindows専用です。それらを使おうという人はインテル製チップが搭載の13inch MacBook Pro, Mac miniが選択できますがMacBook Airは選択できません。

新しいM1チップはとても低消費電力でバッテリーが倍近く持つようです。また発熱も少ないので13inch MacBook Pro以外は完全ファンレスになり無音動作が可能です。売れ筋のMacBook Airでファンレスというのはすばらしいことです。

藤井二冠もAMDのRyzenで自作するなど(彼はAI将棋を使いますから最速のマシンが欲しいのです)、どうも最近インテルCPUは性能が見劣りするようです。アップルが方向転換を始めたことでインテル劣勢が見えてきています。

私がこの夏に製作した自作8号機は安定性を重視してインテルを使いました。私は音楽系のパソコンは、1に安定性(まぁこれはどれも同じか)2に静音性、3に価格、4にメモリ容量、でやっと5に処理速度だと考えています。でも音楽系のテクニカルライター藤本健氏のブログでは、Ryzenマシンを組み立ててどのアプリも問題なく動いているとありましたのでもう音楽系のアプリはインテルCPU必須という時代ではなくなっているようです。

プロセッサ業界は勢力図が大きく変わろうとしています。速くて安いAMD Ryzenの台頭、アップルがМ1に移行でインテル王国が揺らいでいます。インテルは次にどんな手を打ってくるのでしょうか、しばらくは目が離せません。

S.L. ヴァイス:メイキング・オブ・ミッシングパート(28)

2020年11月14日 17時27分31秒 | 音楽系
今回は52~72小節、一気に行ってみます。



52~61小節は前半の7~17小節と同じパターンなので、調は異なりますが同じフレーズです。ただ前半のフレーズと比べると58小節目のモチーフが1小節少なくなっているのが注意点です。前半部では3小節続きますが、後半では2小節です。

バッハではあまり奇数小節のフレーズは出てこないのですが、ヴァイスでは結構頻繁に出てきます。ソナタ第34番のジグの最後の部分とかもっと有名どこだと、ヴィヴァルディの四季の春の出だしなんかが奇数小節フレーズです。



60小節目からイ短調に向かい、62小節目からはリュートの長いソロがイ短調で始まります。このモチーフによるソロは71小節目まで続きます。この部分は完全にヴァイオリンを休みにしようかとも思いましたが、10小節もの長きにわたったお休みというのもナンなので、ソロにできるだけかぶらない音をつけてみました。




72小節目からは新しいモチーフでリュートとヴァイオリンの掛け合いが始まります。

(つづく)

ドレスデン写本のデジタル化(4)

2020年11月13日 12時37分30秒 | 音楽系
違法コピーに関しては、以前初版本のコピーがあろうことが私にまわってきたことがあり唖然としたことがありました。

「中川さん、これヴァイスの曲、〇〇の講習会で使ったものですけど、よろしかったら差し上げますよ」

「ほー。(と言って見てみると、タイプライターで打ったページ番号ですぐに自分の制作したものと分かりました)」

こういうことはたぶん氷山の一角で、私の知らないところで結構コピーされていたのだと思います。苦労して作ったのに勝手に軽々しくコピーしやがって・・・なんて思いましたが、そこはぐっとことばを呑み込みました。

今回自分用にソナタ第39番ハ長調をデジタル化してiPadのForescoreで見ることができるようにしてみました。とても鮮明だし、ここまでするのにそんなに手間はかかりません。いい時代になったものです、ホント。40年前はおろか17年前のバーゼル留学時でさえここまではできませんでした。

写本全体のデジタル化は上記の事情で行いませんが、ソナタ単位ならPDF化をお受けしますので、もしご希望の方がいらっしゃいましたらご連絡ください。

なお、85年の初版出版の際には、ドレスデンの図書館から出版の許諾を頂いております。原本の多くに修正・加筆を行い、目次及び注釈を施した「ドレスデン手稿本によるヴァイスリュート曲集(加筆・修正版)」は中川に著作権があります。

ドレスデン写本のデジタル化(3)

2020年11月12日 22時02分52秒 | 音楽系
こうして全300数十ページを超えるドレスデン写本がやっと紙(薄い印画紙)になって読めるようになった訳ですが、実はドレスデン写本は傷みが激しいページが多く、そのままでは半分くらいしかまともに読むことができません。きちんと読むことができたら製本して自分用に使っていたでしょうけど、そのままでは使い物になりません。そこで可読性を高めるために加筆と修正を行うことにしました。せっかくそこまでするので、それを印刷して自費出版することを思い立ちました。加筆修正はとても1年や2年でできる分量ではなく、空いた時間を見つけてはコツコツと作業をし、完成まで8年近くを要しました。完成したときはこれで老後の仕事がひとつ減ったかと思いましたが、今やるには視力も体力も衰えていますので、あのときやっておいてよかったと思います。



加筆修正を終えたページを上の写真にあるように小さいサイズに切り、台紙に貼ってそれを謄写印刷・製本して50部制作しました。制作が完成した年が1985年でした。その20年後改定版を少し小さめのサイズでコピー印刷して制作しました。(そのときは印刷・製本などすべてキンコーズに依頼しました)その後は印刷原稿がコピー機にからむと困るので増刷はしていません。

初版と改定版合わせると100部以上制作してみなさんに買っていただきました。今でもときどき問い合わせを受けることがありますが事情を説明してお断りしています。

これらの原稿はきちんと保管していますが、久々に取り出してみてスキャンし、それをフォトショップで修正したり補正したりしますと結構綺麗なPDFを手軽に作ることができました。この方法で写本まるごとデジタル化することもチラッと考えましたが、デジタル化すると簡単にコピーしまくる人が出てくるかもしれないのでそれは止めました。

ドレスデン写本のデジタル化(2)

2020年11月11日 14時10分37秒 | 音楽系
ドレスデンの図書館には当時の西側の本は手に入りにくかったのだと思います。当時はまだジョン・ケージは生きていましたが、あいにく向こうが指定した本は一冊も持っていませんでしたので、送金をしました。

ドレスデン以外の東側の国の図書館にもマイクロフィルムの照会をしましたが、ナシのつぶてでそれっきりになってしまったのもありました。

さて届いたヴァイスのドレスデン写本のマイクロフィルムですが、これだけでは楽譜として使うことができません。当時大学の図書館レベルではマイクロフィルム・リーダー・プリンタというもの設置されていているところがあり、これでハードコピー(紙に印刷する)が可能でしたが、そのマイクロフィルム・リーダー・プリンタは恐ろしく高価な機器でとても個人で買えるような代物ではありませんでした。確か80万くらいしていたと記憶しています。

私は当時はもうすでに大学を卒業していましたが、在籍していた大学の図書館にはマイクロフィルム・リーダー・プリンタがあり、学生時代にはよく利用させてもらっていました。これをするのが目的で大学に行っていたようなものです。終わったらさっさと大学を出て、ギタリストがたむろしている某所へ・・・(笑)

ただ、化学処理をしてハードコピーを作るので、写真と同じように定着処理をしないとすぐ印字が消えてしまいます。学生のときに大学の図書館にこもってマイクロフィルムからせっせと印字した楽譜のほとんどがすぐ退色して使えなくなりました。一番最後に印字をした、トマス・ロビンソンのスクール・オブ・ミュージックだけは定着処理をしましたので、現在でもはっきりと読むことができます。(定着処理をすれば大丈夫だとわかったのが、ロビンソンのハードコピーを作る少し前で、すでに作ったハードコピーは退色が始まっていました)

マイクロフィルム・リーダー・プリンタがない場合は写真として現像焼き付けをする以外に手はありません。幸い私のウチは父親が写真店を営んでいたため設備一式がそろっていましたので、父親が暗室などを使っていないときにセッセと現像焼き付け→定着→水洗→乾燥をやっておりました。

現像焼き付けと定着はそんなに大した作業ではないのですが、水洗と乾燥はなかなかハードな作業でした。印画紙はこういった書類等のハードコピー専用の薄手のものがフジフィルム出ていてそれをつかいましたが、紙が薄いので水洗や乾燥の作業が大変なのです。春先の作業でしたので水も冷たかったし。でも水洗をしっかりやっておかないと、二十年も経てばセピア色になってしまいますので特に念入りに行いました。