院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

働きたがる精神病患者さん

2013-01-29 07:03:53 | 文化
 働くのが無理な精神病の患者さんでも働きたがることが多い。無理なのに、現代労働の対人関係の中に自らを投げ込んで、無残にも敗北して、再入院となる患者さんをこれまでイヤというほど見てきた。

 そもそも働くということは本能に近いものなのだろうか?それとも、文化に規定されているのだろうか?

 評論家の小浜逸郎は、「一生食べるのに十分なほど蓄えがあっても、人間は働くだろう」と推察している。

 私は「働かないだろう。しかし、何らかのアクションは続けるだろう」と思う。

 古代ギリシャを見ると、市民階級は食べるための労働をしなかった。それは奴隷の役目で、自分たちは知的な(一文にもならない)活動に力を注いだ。

 石油だけで食べていけるサウジアラビア人も、生産的な労働はしないようだ。

 働くのがとても難しい患者さんが働きたがるのは、生産が人間の本能だからではなく、日本の働きカルチャーの中で人並みでありたい、ということだと思う。

 働きカルチャーを失ったサウジアラビアの患者さんは、日本の患者さんほど働くことを渇望しないと思うのだが、これは調査をすればすぐに分かることである。