院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

集団活動はガキ大将から学んだ

2013-01-31 23:58:08 | 教育
 小学校とは勉強を習うというよりも、集団活動を学ぶところだと昔からよく言われるが、本当だろうか?離島の生徒が一人しかいないような分教場では、どうやって集団活動を教えるのだろうか?

 私自身は集団活動は、ガキ大将を頂点とした子どもたちの縦の系列で学んだような気がする。小学校は、「前に倣え」で列はまっすぐ作れとか、「気を付け、休め」を掛け声通りにやれとか、行進は足を揃えろといったことを、軍隊式に習うような、私にとって堅苦しい場所だった。最近流行し始めたように言われるけれども、いじめだって実は当時からあった。

 ガキ大将を中心としたグループは学年縦断型で、規律が緩く、ガキ大将は人望がある上級生が自然発生的に選ばれた。ガキ大将は原っぱでゲームをするときにも、幼い者、弱い者にはハンディをつけてやった。かけっこでは遅い子のスタート地点を少し前にさせた。ガキ大将は根本的に弱者にやさしかった。喧嘩が生じると裁判官的な役割を果たした。一目も二目もおかれたガキ大将の判定は、人情味があるもので、みな納得した。

 三人寄れば一人が仲間外れになるとは、ずっと昔から言われていたではないか?小学校のように、地理的な区分だけで子どもを集めても、集団になれば争いは避けられない。教師が指導してそれらの対立を収めるのだが、教師はその権威においてガキ大将に及ばなかった。

 私は大学受験に一度失敗して、予備校に通った経験があるが、予備校でいじめが発生することはなかった。目標は大学合格のただ一点だったから、目標を達成する以外の無駄な行動は一切生じなかった。だから、いじめなんていう受験に関係のない悠長なことをやっている暇は生徒にはなかった。

 小学校は集団活動を学ばせようという下心があるから、かえっていじめが生じるのではるまいか?いじめは「ヒマ」の代名詞ではないか?ガキ大将なら、もっとうまく子どもたちを統率していくはずである。マス教育は本当はだめなんじゃないだろうか?学校集団は心理的に必然性がない(学区による)集団だから、いじめが発生するのではないか?

 それにしても、ガキ大将という存在がなくなって、学年縦断的な子どもたちの系列がなくなってしまたのは何故だろうか?私の子どもたちの時代にはガキ大将という存在はすでになかった。ガキ大将は子供たちに一定の規律(掟)を教えていた。何故消えてしまったのだろうか?

日本精神病理学会

2013-01-31 04:13:08 | 学術
 精神医学の中に「精神病理学」という分野がある。この学問は、精神病はなぜ起きるのか?幻覚や妄想の本体は何か?といったことを研究する学問である。

 精神現象やその異常が自然科学的に説明できないから、精神病理学という人文科学的な見地から説明しようというわけである。物理学や経済学が数学を援用するように、精神病理学はしばしば哲学を援用する。そのために、ときに精神病理学はきわめて難解となる。精神病理学が理解できる精神科医はむしろ少数派だろう。

 精神病理学者たちの一番の弱点は「その学問て、治療に役に立つの?」と問われたときに露呈する。じじつ、精神病理学は治療の役にはあまり立たない。

 しかし、私見では精神病理学は精神医学の基礎論だと思う。今すぐに役に立つものではない。ちょうど材料の研究に似ていて、その材料がどんな物品に応用されるか分からない。それでも材料は研究されている。精神病理学はこれと似たところがある。

 精神医学の鑑定書は、よく文学的だと批判されるが、自然科学的な説明ができない以上、文学的にならざると得ないのだ。鑑定書は一本スジが通っていなくてはならない。そのスジの背景をなすのが精神病理学で、きわめて精緻に組み立てられている。

 精神病理学はすぐに治療に役立たなくてもよいのではないか?

 日本精神病理学会という学会がある。私も学会が設立された時からこの学会に加入している。ところが10年前、この学会が「日本精神病理・精神療法学会」と名称を変更されてしまった。精神病理学が精神療法に役立つはずはないから、この名称変更は精神病理学者が「それ、何の役に立つの?」と問われ続け、苦し紛れに学会の名称を変更したのだと私は思った。精神病理学者はもっと誇りをもったらいいのにとも思った。

 ところが今年、「日本精神病理・精神療法学会」は、名称をもとの「日本精神病理学会」に戻した。学会の幹部たちも、「精神病理・精神療法学会」では、あまりに座りが悪いことにたまらなくなったのだろう。

 学問にはすぐに役に立たないものも多いのだ。役に立たない学問をかかえておられるということは、その国が豊かであることを示している。