院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

精神障害者差別法案が上程される!!

2013-06-04 00:03:33 | 医療
 さきごろ立て続けに起こった、てんかん患者による悲惨な交通事故をきっかけに、てんかんを持っていることを申告せずに交通事故を起こした時の罰則が強化されようとしている。

 特定の病名を欠格事由とするのは不合理である。病名ではなく、状態像で判断すべきである。

 てんかん患者の罰則強化については、一部で報道されている。だが、まったく報道されていないが、この改正案には別のきわめて重大な欠陥がある。

 統合失調症と躁うつ病も罰則が強化されることになったのだ。なぜだろうかと思う。統合失調症者や躁うつ病者が特別に交通事故を起こしやすいという統計データも何にもないのにだ。データがないことは警察庁も認めている。つまり法制審議会は、非科学的なことを平気で論議したのだ。

 これは根拠のない差別である。まあ、根拠がないのに不利益を与えることを差別というのであるが・・。

 こうした差別法案が法制審議会の原案として可決された。日本精神神経学会は、法制審議会に対して精神科医の意見も求めるように要望したが、拒否された。なぜ拒否して素人だけで決めようとするのだろうか?(反対するに決まっていると思っていたのだろうか?)

 精神科医のあずかり知らぬところで差別法案が国会に提出されようとしている。これまで欠格条項は順次撤廃されてきた。今回の法案は、それを元の木阿弥にしてしまう。

 私が精神障害者リハビリ施設で働いていたころ、公営プールに精神障害者は入れなかった。プールの玄関に堂々とその旨が書かれていた。

 今回の法案は、公営プールは精神障害者お断りという類の風潮を、復活させようとするものだ。ご丁寧にも法律で差別を奨励しようとしているのである。かつてハンセン病は法律で差別されていた。それと似たようなことになる。

 日本精神神経学会は声明を出しているが、マスコミが取り上げなければ誰も気が付かないだろう。

 読者の中には精神障害者が生理的に嫌いだという方もおられるかもしれない。でも、交通事故率は健常人となんら変わらないという事実は知っておいていただきたい。