院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

サイン(署名)の値段

2013-06-09 03:48:04 | 経済
 「開運なんでも鑑定団」という番組が面白く、20年前に始まったころから見ている。小汚い茶碗が何百万円もしたり、豪華な壺がニセモノだったりして、これまで知らなかった世界を番組は見せてくれた。

 最初のうちは、たんに値踏みをするだけだったが、最近では品物の歴史が語られるようになり、値踏みよりもそちらのほうが面白い。

 この番組にしばしば出てくるのが、有名スポーツ選手やタレントのサインである。これまで出てきたサインのうちで最も高かったのが、ビートルズが来日したときに乗った車の天井に書いたサインだ。確か、何百万円もしたと思う。

 陶器や絵画に高値が付いても理解できなくはないが、サインごときが何故こんなに高価なのか不思議である。サインには美的価値も歴史的価値もないはずだ。

 高値でも買う人がいるから高いのだという説明は的を射ていない。私が疑問なのは、なぜそのような人がいるのだろうか、ということだからだ。

 番組によれば、アメリカにはサインビジネスというのがあるそうだ。バスケットボールの有名選手が、業者が用意したたくさんのボールに次々とサインをしていくのだという。そのようにして「生産」されたものでも欲しがる人がいるというのが不思議である。

 ときに、例えばピカソのような有名画家の殴り書きのような鉛筆画が出品される。そのような品物にけっこう高い値段がつくのが不思議だった。

 だが、サインに高値が付くことを思えば、殴り書きにピカソのサインがあれば、その値段は殴り書きの値段ではなくサインの値段なのだと考えれば、いくぶん納得できる。

 ところが鑑定士はそうは言わない。「殴り書きのように見えても、さすがにピカソで、味わいが違う」なぞと審美的な理由が付けられるから、私にはわけが分からなくなる。

 美術的な価値よりも、希少価値や知名度で値段が決まるのだとはっきり言ってくれれば、私の胸のつかえも降りるのだが・・。(でも、お金を払ってサインを買う人の気持ちは、依然として分からない。)