院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

売薬のネット販売解禁に寄せて

2013-06-26 00:03:16 | 医療
 売薬のインターネット販売が自由化されようとしているが、自由化されても何の問題もない。なぜなら、ほとんどの売薬がプラセボーだからだ。プラセボーとは、ほんものの薬そっくりにできた錠剤などで、中味はうどん粉である。

 効くぞ効くぞと言われてプラセボーを飲むと、ほんとうに効く。これを「プラセボー効果」という。

 アリナミンはビタミン剤だが、普通に食事をしている人に余分に与えても、排せつされてしまうだけである。でも、飲んだ人は元気になったようなような気がする。そのため、この「薬」は武田薬品の大きな収入源となっている。

 けっこうな値段だが、買う人は買う。だが、病院でアリナミンをもらうと健康保険が利かない。それは、病院ではアリナミンをプラセボーだとみなしているからだ。

 QPコーワゴールドは、カフェインが入っているから、一時的に元気になる。ドリンク剤にはみなカフェインが入っている。

 そのようなわけで、これらの売薬をネット販売しても、どうということはない。

 実は、医者の処方箋が必要な薬にも効果が怪しいものがある。典型的なのはSSRIという仲間の抗うつ剤である。SSRIには、プラセボーと比べて、ほんのわずかにしか効果が上回らなかった薬がある。ある試験で効果があると認められても、別の研究者が行った試験では効果がなかったということもある。

 この場合、「効果あり」という結果を得た研究だけが採用され、「効果なし」と出た研究は闇に葬り去られる。

 今、世界中の精神科医が、「効果なし」と出た研究結果(これをネガティブデータと呼ぶ)も全部公表せよという運動をネット上で展開している。

 「トクホ」指定以外の食品も「効能」を謳ってもよいことになるらしいが、それについてはまた別の機会に。