院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

ハイボールとウイスキーの水割り

2013-06-08 02:43:16 | 食べ物
 最近、ふたたびハイボールが流行っているのは、宣伝上手のサントリーの戦略である。かつて山口瞳や開高健を擁したサントリーの広告のうまさには昔から定評がある。

 ハイボールはウイスキーを炭酸で割ったチュウハイのようなもので、私が幼少時代からあった。角瓶ではなく、トリスで作ることが多かった。トリスはお世辞にも美味しいとは言えなかった。当時、角瓶は高級品だった。亡父が大事そうに角瓶を買ってきた覚えがある。ハイブローな人は、角瓶よりもう1ランク上のダルマを飲んだ。

 サントリーは自らのウイスキーをスコッチと呼んでいた。本場のスコッチはものすごく高価で、ジョニ黒が8000円もした。今の価格にすると8万円くらいの感覚だ。それがどんどん安くなって、私が酒を飲むようになったころには20分の1まで下がっていた。

 その頃、スコットランドのスコッチ組合は、サントリーがスコッチと名乗って売っている酒はスコッチではないと訴えた。味もそうだが、そもそも材料や製法が違うと。以来サントリーは自らのウイスキーをスコッチとは名乗らなくなった。

 その後、本物のスコッチを飲む機会があった。サントリーのウイスキーとは似てもつかぬほど美味しいものだった。その時初めて、ハイボールはサントリーウイスキーのまずさを誤魔化すための方策だったのだと知った。

 イギリスのスコットランドに行ったとき、バーで水割りを注文した。水割りのことを「ウイスキーアンドウオーター」と言うのだと教わっていたので、そのように注文した。そうしたら出てきたものは、ウイスキーにごく微量な水と氷が入ったものだった。すなわち、ほとんどオンザロックというよりストレートだった。本場ではウイスキーを薄める習慣はないのだと分かった。

 日本のバーでは普通にウイスキーの水割り作ってくれる。ハイボールも作ってくれる。上等なウイスキーも、平然と水で割られる。希釈の度合いは、しばしば10倍以上に及ぶ。スコットランドの人から見れば、信じられないような飲み方だろう。

 日本に水割りが浸透したのは、これまたサントリーの普及活動によると思うのだが、どうか?