(ウィキペディア「TK-80」より。)
大型コンピュータは当時の値段で1億円くらいした。だが、コンピュータの取り扱いを覚えた私は、どうしてもコンピュータが欲しかった。入力したプログラム通りにラインプリンタから印刷物が出てくる快感は、これまで味わったことのないものだった。でも1億円ではねぇ。
大学を卒業して2年たったころ、上のキットが出た。コンピュータの中身を勉強するため、NECが出した製品である。私は飛びついた。10万円ほどしたが高いとは思わなかった。別に5Vの電源が必要だったが、当時住んでいた浜松では売っていなかった。そこで、上京したおり秋葉原で電源を買った。電源だけで5万円もした。
入力は右下のキーボードから行う。16進数のマシン語で入力するのだ。これによって私はマシン語とアセンブリ言語を覚えた。
メモリは増設RAMを別に買わなくてはならなかった。RAM1個で0.25Kバイト。4個付けて1Kバイトにしかならなかった。当時、RAM1個が2,000円以上した。だが、自分のコンピュータを自由にいじれるのだから、高いとは思わなかった。
出力装置は右上の8個の日の字型LEDである。この素子は現在でも使われている。でも、普通は数字しか表せない。ところが、このキットでは日の字型の1辺ずつを光らせることができた。だから、日の字の中央の横線だけを光らせて、さらにその右の日の字の中央の横線を光らせる。そのとき、前の横線を消すという動作を繰り返すと、日の字の中央の横線だけが、左から右に弾丸のように走っていくように見える。
なんの役にも立たない動作だが、成功すると嬉しかった。私が現在でもハードのことをある程度知っているのは、このときの経験による。
(あれ以後、私の5回の引っ越しに付き合って、TK-80と電源は自宅の納戸にまだ置いてある。)