(テキサスインスツルメンツ社のHPより引用。)
ワンボードマイコンが発売されたのは、8ビットのワンチップCPU(中央演算装置)が開発されたことによるが、それ以前にデジタル論理チップが廉価で出回っていたことも大きい。
工学部の人々は測定器をデジタル化するようになった。彼らは論理チップを組み合わせるだけで測定器を制作する派と、マイコンを使ってハードはそのままに、ソフトだけで目的の測定を実現しようとする派に分かれた。
論理チップを配線(ワイヤー)するだけで所期の目的を達することをワイヤードロジックと呼んだ。一方、IBM社は今後、自社の収入源はハードは1割でソフトが9割になるだろうと予言した。そして、短期的にはそのようになった。
論理チップは上掲のテキサスインスツルメンツ社がたくさんの種類を提供しており、私はいろんなチップを使ってワイヤードロジックに挑戦した。デジタル回路の工作はきわめて面白く、熱中した。(扱うのが0か1かだけなので理解しやすかったのだ。)
私が作った回路は、ボタンを素早く連続して叩いて、その時間間隔を測るというものだった。多くの技術を工学部の友人に教わった。
ボタンを叩く間隔は極端に長いものや短いものは少なく、平均値付近に集中して、予想どおり正規分布をなした。たったそれだけのことだが、達成感があった。医学部を卒業して3年目のころだったと記憶する。
(ウィキペディア「正規分布」より。)
(心理学の方面で「タッピング検査」というボタンを叩いて器用さを測る装置がある。複数のボタンがついているだけの金属製の箱で、動力やセンサーは付いていない。「器用さ」は検査者が目視で測る。私の回路を使えばこの検査が数量化できると思った。)