国際通りは那覇観光にとっては注目のエリアなのかもしれないが、私はそんな場所に全く魅力を感じない。だいたいどこでも同じようなものを売り、とりわけ美味しいということもない(普通に美味しいと思う)観光客向けの飲食店が並ぶ国際通りは、沖縄初心者が楽しむ場所としては最適かもしれないが、私にはちょぴり騒がしすぎる。
ところがそんな通りを1、2本入ると、静かな街並みが続いている。そんな通りで不思議な工芸品店に出会った。正直、観光客には敷居が高すぎてが入りにくく見えるし、それほど繁盛していないだろうという風情のお店である。少なくても那覇の夜の街に繰り出す若者たちは、その存在すら認識できないようなたたずまいなのだ。しかし私はなぜかそんな雰囲気に魅了されてしまい、店員が見当たらないそんなお店に入ってしまう。
まさに私の描いている那覇の工芸品店である。売られているものの質は明らかに表通りのお土産屋の比ではない。みなこの店の主は相当な目利きであることがわかる。しかも八重山のものがひじょうに多い。それに布、漆器など、そんなあまりお土産屋でみないものが所狭しと並べられている。私のちょっぴり感動した表情は、お店の奥にいた「おばあ」にも伝わったのだろう。私はそこで小一時間、そんな「おばあ」と話をした。
昭和7年生まれの「おばあ」は竹富島出身で、なんと八重山のみんさー織の織子だった。八重山を愛するだけでなく、沖縄の工芸を熱く語り、もう誰も買わないような古い琉球ガラスや、漆器、黒檀の工芸品など、アメリカ時代のお土産を次々に見せてくれた。もう誰も買わんから、半額でいいから持っていきなさい、と私はいくつかの小物を購入したりした。
時間が止まっている、というのはちょっと感傷的で、文化の変化を否定する表現かもしれない。しかし、国際通りという最も沖縄観光の変化に順応して日々変わりゆく街とは対照的なたたずまいであることは間違いない。しかし、そんなお店があるから那覇は面白い。那覇に住み続けていれば、私はそんな店に気が付かずに終わったかもしれぬ。一度、離れたから見える風景というのはこういうものなのかもしれない。そう思うと沖縄を離れた自分の人生の選択は間違っていなかった、と安心するのだ。
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