Pの世界  沖縄・浜松・東京・バリ

もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

ハラス

2010年07月31日 | 
 昔、函館に来て食べたものの中で、その美味しさに舌づつみをうち、感動すらしてしまった食べ物が「サケのハラス」あった。それまでぼくは「ハラス」なる食べ物の存在を知らなかったし、食べたきっかけも、決してポジティブなものではなかった。函館の朝市で1000円以上するイクラ・ウニ丼なんて食べる気がしなかったし、安そうで、隣のおじさんが食べているものを指差し、「これと同じものをください」と頼んだのがその最初である。
 函館から帰った当時、東京のお店にハラスを見つけては、かみさんに頼んで家で焼いてもらった。もちろん美味しいのだが、やはり函館で食べた味にはほど遠く感じた。記憶の味は当てにはならないものだが……。
 ぼくが約二十年ぶりに函館に来て、最初に食べたかったものは、ハラスである。家族が丼ものを注文するのを横目に、ぼくは迷わず「ハラス定食」といった。これほど迷わずに、注目するのは久しぶりだ(たいては注文した後に、やめておけばよかったと思う)。
 二十年ぶりの函館のハラスはやはり美味しかった。函館という場所がぼくの脳裏に「これは感動的にうまい」という信号を送っているからなのかもしれない。どうであれ、函館でハラスが食べられたことに満足しているのである。


函館は神戸に似ている?

2010年07月30日 | 
 二泊三日で休暇をとって函館に来た。二十年近く前に会議で函館に来て以来である。そうはいっても、那覇の公設市場と同様に、テレビ番組で函館の朝市はよく放映されるので身近な感じがする。観光客の訪れる「市場繋がり」の街である。そういえば、金沢の近江市場もその一つ。
 箱館から函館に変わったばかり時代の元町に出かけた。いわゆる明治から大正時代に作られたレトロな建物が並ぶ街である。観光客は見逃せない場所だろう。函館と同様に、江戸末期に開港した神戸もまたこうした街並みで有名だ。
 函館のレトロな建物を見ながら「そうか!」と思い出したことがある。1年ちょっと前、神戸でガムランの演奏をした帰り、仲間と神戸の外国人居留地の街並みを見学したことがあった。その中に函館出身のガムラン演奏者の知人がいたのだが、彼女の表情が、とりわけ驚くこともなく、淡々と風景を見ていたことを思い出した。そうか、函館出身ということは、こんな風景に驚くことはないわけだ!
 そんなことを話したとき息子がこういった。
 「長崎とも似ているな」
そうか、君は修学旅行で幕末に開港した長崎に行っているんだ。

ウメダダンスの様式と意味

2010年07月29日 | 
 神保町の古書店の店頭ワゴンに面白い本を見つけた。タイトルはSociety and the Danceで、舞踊人類学の論文集である。500円の値段シールが表紙に無造作に貼られている。ぼくは手にとって所収されている論文のタイトルを眺めた。
 すると、その中に極めて興味深い論文のタイトルがあることに気がついた。タイトルは、Style and meaning in Umeda dance. なぜ興味深いかって? そういう個人的な理由には答えられないのだが、とにかく私は炎天下の中、古書店の店頭ワゴンの前でこの論文に食いついたのである。
 この論文はパプアニューギニアのUmeda villageのidaとよばれる儀礼における仮面舞踊の研究であり、その踊りのステップの描き方の社会的意味について論じられたものなのだ。ぼくは迷わずこの本を買い、喫茶店に直行した。モンブランケーキを食べながら、この論文を読んだのち、本日のメインイベントである科研の打ち合わせに向かおう。ぼくのために神保町を打ち合わせの場所に設定してくれたS先生に感謝。


真夏の神保町

2010年07月29日 | 東京
 真夏の最中、汗を流しながら神保町を歩いた過去の記憶は、中学生時代にさかのぼる。少ないおこずかいで、それでもたくさんの本を買って、重いカバンのもち手で指がちぎれそうになりながらも、炎天下を歩いた。一軒ずつ古書店をしらみつぶしに歩いた。とぼとぼ、とぼとぼ……。
 暑さの記憶、充実した時間の記憶、買った本の記憶が今も入り混じって、不思議な世界を醸し出す。私が愛する世界はまさにここにある!しかし、この時間を体験するためには真夏の神保町でなくてはならなかった。
 2010年7月28日の午後2時40分、ぼくはその神保町にいて、この文章を書いている。うだるような暑さの神保町を歩いた。昔と同じように重い荷物をもって、とぼとぼ、とぼとぼ。しかし中学生時代のようにぼくは半日も歩き続けることはできない。あれから30年も経過しているのだから。
 涼しい喫茶店で、眼下に見える炎天下のすずらん通りを眺める。幸せな時間。やっぱりぼくは自分の原点であるこの地へといつの間にか戻ってくる。とぼとぼ、とぼとぼ……。



ホテルの部屋ではありません(キジムナーフェスタ2010 バリ日記ー31)

2010年07月28日 | キジムナーフェスタ2010
 荷物検査にいろいろ引っ掛かり、中身を事細かに調べられ、とんでもないことに。だって肌着30枚を最後に買って、なんとか閉めたトランクを開けられたのだからたまったものではありませんよね。いろいろチェックされ、最後は無罪放免になったのですが、さあ、荷物を元通りにするのが大仕事。これ空港のフロアーなんです。ホテルの部屋じゃないんだけどな。
 ちなみに私はこの最中、国内線ターミナルに移動しました。仕事で羽田に向かわなくてはならなかったからです。ということで、最後までバリのみなさんにお付き合いできませんでしたが、あとで聞いたところ、全員、無事に出国できたようです。
 お疲れ様でした。本日をもってキジムナーフェスタ2010、バリ日記は終了です。また通常のブログに戻ります。全31話をお読みいただきありがとうございました。

ここまではよかったんだけど(キジムナーフェスタ2010 バリ日記ー30)

2010年07月28日 | キジムナーフェスタ2010
 帰国日やってきました。たくさんお土産を買って荷物の重量は超過しませんか?男性の肌着一人で30着も買って、いったいどうするの?
 皆さん、それぞれ踊りの衣装とおみやげをいっぱいトランクに詰めて那覇空港の国際線ターミナルに到着。さあ、チェックインをしよかな。ここまではよかったんです。ここまでは……。

盛り上がりました(キジムナーフェスタ2010 バリ日記ー29)

2010年07月27日 | キジムナーフェスタ2010
 今日はいつもの「守礼」で送別会でした。それはそれは、盛り上がりました。もう最後はドンチャン騒ぎ(これは言いすぎかも)でした。スアンダさんの「相撲ネタ」パントマイムは皆を笑わせたし、ジャナさんは購入したカメラで写真をバシバシ撮影していました。
 それにしても仲間っていいなあ、と思います。仲間がいるってとてもすばらしいことですね。「先生」と呼ばれるし、ぼくは「先生」であるのだけれど、ここでは指導者ではなく、皆と同じに演奏者です。だから仲間。「先生」というのは、ぼくの職業の呼称であるに過ぎないのです。
 今日の写真の掲載はやめておきます。どの写真も差し障りがありそうなので。明日はバリの人々とお別れです。

皆さんに感謝(キジムナーフェスタ2010 バリ日記ー28)

2010年07月26日 | キジムナーフェスタ2010
 上演にかかわってくれた皆さん、観客として足を運んでくれた皆さんのおかげで無事3回の公演を終えることができました。ありがとうございました。もっともっとまとまりのあるいい演奏ができるように、新しい演奏者を育てていきます。また数年後には大きな舞台に挑戦したいと思います。その前に、底上げを目的とした練習ですね。
 欲を言えば、あと2,3回公演があればよかったと思います。そうすると劇における音楽の在り方のようなものが完全に理解できたのではないでしょうか?もう演奏者たちはヘトヘトですね。ごめんなさい。

いける口(キジムナーフェスタ2010 バリ日記ー27)

2010年07月26日 | キジムナーフェスタ2010
 25日はキジムナーフェスタの最終日、そしてすべての舞台の中で私たちの公演が「おおとり」だった。上演者はバタバタと閉会式に出演したり、その後、フェスタのパーティーに合流。パーティーといっても最後はどんちゃん騒ぎ。挨拶があったりするようなものではなく、ほとんど「飲み屋」の状態である。
 スアンダさん、隣のアメリカ人を見習い、新しいお酒に次々挑戦。
1)プラスチックに入った日本酒
 日本酒はいけるね。これをお兄さんに持って帰りたいな。
2)枡にはいった日本酒
 どうして同じ日本酒が、枡にはいるとこんなにおいしくなるんだろう。ぼくはこの枡をバリに持って帰り、アラックを入れて飲もう。
3)泡盛ロック
 これはいいね。一番、アラックに近い。飲みやすいなあ。これ一本ここで買って帰ろう。

 そしてぼくはクーポンを集めて、スアンダさんに泡盛を買ったのだった。まあ、嬉しそうにホテルに持って帰ったこと!

ランダ重いよね(キジムナーフェスタ2010 バリ日記ー26)

2010年07月26日 | キジムナーフェスタ2010
 3回目の公演は、残念なことに途中で2度の夕立。観客の一部が移動したりしてバタバタしましたが、それでも中断することなく上演を終えることができました。さすが最後の公演、役者たちも気合が入りました。
 ガムラン奏者はすべての公演が終わっても「疲れた」なんて言っていられません。楽器をトラックにのせて、大学のスタジオまで移動。皆は本当によく働いてくれます。「ガラスの腰」を持つ私だけが、重い楽器をパス。なんだか罪悪感すら感じます。
 学生のメンバーがランダを抱えさせられて大慌て。持つのは初めてだし、なんといってもランダですからね。ごめんね。でも。たまたま君しかいなかったんだよ。君なら大丈夫って思ったんだよ。