Pの世界  沖縄・浜松・東京・バリ

もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

真鍮ガムラン

2018年08月31日 | ジャワ

   ガムランは青銅で作られた打楽器アンサンブルである、と説明することが多いが、近年は青銅の値上がりにより代用品として、真鍮やら鉄が使われることがある。特にジョグジャカルタ郊外にはそうした金属で楽器を作る専門の工房がいくつも立ち上がって、結構、注文に追われている。
   今回、パレードでトラックの上で演奏されていた真鍮製のジャワの楽器の演奏を始めて見た。サロン(鍵盤楽器)を見てみると、一枚の板をきれいに曲げて作られていることがわかるだろう。青銅だと鋳鍛造なのでかまぼこ型になるが、真鍮板を曲げただけであればかまぼこにはならないのである。
   バリでは真鍮のガムランは嫌われるだろう。近年、高価な大型ゴングが鉄で作られているが、これも代用品としての位置づけである。しかしジャワでは代用品からすでに「真鍮のガムラン」が市民権を得ているような気もする。ジャワの青銅製のガムランは大型で、青銅で楽器を作ることははっきりいって金銭的に簡単ではない。結果的に真鍮製のガムランの音は、すでにジョグジャカルタ市民の新しい耳をつくり、彼らはそれを受け入れたように思う。もちろん伝統音楽では青銅製の楽器であろう。しかしガムランはもはや伝統音楽にとどまらない。さまざまな新しい音楽の中に取り入れられていくことで、楽器も変化していくものだ。つまり新しい音楽の中で、新しいガムランは市民権を得ていくということだ。


かつ丼&マンゴージュース

2018年08月30日 | バリ

   一本前のブログに掲載したカフェでいただいた「かつ丼&マンゴージュース」である。見た目、結構旨そうに見えるではないか!これ、本当に美味しい。まあ、日本食なるものをバリで出される基準で測れば、かなりいけるレベルである。ただ、若干「揚げ過ぎ」の感はあったが、それでも砂糖の入れ方、卵の半熟度、玉ねぎ具合などどれをとっても、私なりに合格点である。だいたい、注文してから肉を揚げているので、サクサク感もある。
   カフェ飯なんぞは、ほとんど日本で食べたことがない。しかし、これは、このカフェにとってはかなり「エスニックな」カフェ飯なんだろう。日本のカフェでタイ風焼き飯やら焼きそばが出てくる「あの感覚」である。日本のカフェでエスニック料理が出てきても何ら違和感はないわけで、バリのカフェで「日本料理」もその点では同じことにならないか?
   この店にまた行くかどうかはわからない(もしS教授がまたこの近辺に宿泊したなら絶対に行くだろう)。だいたい一人でこんな洒落たカフェーになんぞ入ることは考えられないが、35,000ルピアでかつ丼が食べたくなったときはお勧めのカフェ飯である。


おしゃれなカフェで…

2018年08月30日 | バリ

   日本では「カフェ飯」なんて言葉が使われるようになって久しいが、ここインドネシアでもちょっぴりオシャレなカフェが増殖中である。聞くところによると、ジャカルタをはじめ都市から広がった本格派コーヒーブームがインドネシア全土に広がってきているらしい。そしてそれこそ「カフェ飯」を出すところも増えてきたようだ。そんな私は、オシャレにはほど遠い生活をしているわけだが、たまたまS教授が帰国するということで、S教授の宿泊するホテルの近くのカフェに入ったのだった。
   とはいってもS教授が宿泊しているところは、いわゆる観光地からは少し距離があり、正直に言えば、「普通の村」に毛が生えたようなところである。まわりはワルンやら一般庶民の店であふれている。そんな場所にオシャレはカフェがあったわけだ。ここも別の小さなホテルの一部であることがあとでわかったのだが、素敵な空間だった。
   そして、ここでいただいたカフェ飯が35,000ルピアの「かつ丼」。この写真も撮影したのだが、カフェの雰囲気がわからないために掲載はしなかった。しかしそのかつ丼がまた旨いのである。270円のかつ丼に、旬のマンゴージュースでディナーという最高のカップリング。しかも、オシャレなカフェではお箸は出ないので、スプーンとフォークでどんぶりに入ったかつ丼を食べるという新規性。だいたいかつ丼とマンゴージュースのカップリングなど日本では想像できまい。ということですばらしい体験だった。やっぱり次回、そのかつ丼とマンゴージュースの写真を掲載しようと思う。


ジョグジャのトゥグ駅

2018年08月29日 | ジャワ

   何度見ても素敵な駅だなと思う。観光地ゆえに整備されているとはいえ、その外観は20世紀初頭のオランダ植民地時代を彷彿させる。ヤシの木の並木もそんな風情を醸し出している。ところが外観とは裏腹に、今ではすっかりコンピュータ化され、チケットも窓口で受け取るだけではなく、自身でディスプレイを操作して打ち出すものもある。1980年代に最初にここに降り立ったときとは大違いだ。
   そもそもバリの研究者にとって、インドネシアの電車は珍しいのである。バリには電車は走っていない。沖縄と同じである。だからアザーンの響きと、電車の音はものすごく新鮮に感じるわけだ。今回は駅を見に行っただけで電車に乗ったわけではないが、いつか時間ができたら、途中下車をしながらゆっくりバンドゥンからバニュワンギまで、電車の旅を楽しみたいと思う。
   最近は「いつか」「いつか」と思うことばかりだが、そのためには健康第一だな、とつくづく思うのだ。しっかり食べなさい」「栄養をとりなさい」「ちゃんと休みなさい」と口うるさく言っていた今は亡き祖父と祖母をこのところよく思い出す。確かにその通りだと思う。あのとき、祖父と祖母は、私に言うのと同時に同じことを自分に言い聞かせていたんだろう。


ワヤン柄のバティックの上着

2018年08月27日 | ジャワ

   ジョグジャでワヤン柄のバティックの長袖の上着を購入「してしまった」。実は、当初は購入予定はなかったのが、S教授の強い熱意とワヤン愛がぼくの心を動かしたのだった。ちなみにS教授の購入した上着は色違いであり、彼が本当は購入したかったがサイズが合わなかったものを私が買ったわけである。ちなみに私にはぴったりである。なお、S教授のバティックはこれである。
   それにしてもジョグジャはソロにはワヤンをモティーフにした衣装やらお土産品がたくさんある。これはバリとは全く異なる点だ。つまり中部ジャワの地域のアイデンティティとワヤンは強く結びついているが、一方バリでは、ワヤンは影の芸能である。バロンやレゴンはTシャツのモティーフになってもバリのワヤンは登場しない。1980年代にバリのワヤンの従者でトゥアレンをモティーフにしたバティックを目にしたことがある。その後、それを探したのだが、見つからなかった。たぶん一時は制作したのだろうが、その後は(きっと売れずに)やめてしまったのだろう。
   さて、このワヤン柄のバティックの上着はいつ着ることにしようか?このくらいフォーマルであれば、十分に仕事着である。ちなみにこれと同じ色と大きさの服を、N先生も購入した。つまりジャワへ調査に訪れた三人の教員はみな、この衣装を持っているわけだ。なんだかチームウエアのようだ。


マリオボーロ通り

2018年08月26日 | ジャワ

   5年ぶりのジョグジャ。しかしマリオボーロ通りはあいかわらず、所狭しと衣装や民芸品を並べる出店がずっと続いていて、昔とちっとも変わらない街という印象です。なんだかここだけは時間がとまっています。インドネシア各地からの観光客であふれかえっているもの同じです。以前よりももっと増えたのかもしれません。
  雑然としていて落ち着かない街にも見えますが、私は結構このジョグジャの風景が好きなのです。のんびりした田園風景は素敵ですが、この雑踏にもなんだか不思議と惹かれるものがあります。この街にはインドネシア各地から観光にやってきます。かれらは、古都に来て古のインドネシアの姿を見つつ、お土産を売るこの通りに集まるのです。日本でいえば、国内各地から京都に来て古都を味わいつつ、新京極か寺町通のお土産屋をひやかしながら歩くようなそんな感覚なのかもしれません。
  次に来るのはいつかな?きっとそのときもこの風景だけは変わらないんだろうな、と思っています。


プンドポ

2018年08月23日 | ジャワ

   中部ジャワのソロにあるマンクヌガラン王宮のプンドポは、何度見ても本当に美しいと思う。ガムランは鳴っていなかったけれど、手を下でたたくだけで音が反響する。側面はすべて解放されているにもかかわらず、天井から音が降ってくるように思える。
   久しぶりの中部ジャワ。いろいろ思い通りにいかないこともあり、結構ハードな一日を送っているのだけれど、それでもこうして海外で調査ができているのだから幸せだと思う。明日は2日滞在したスラカルタから移動するが、久しぶりのジャワ滞在を充実させないと。やれることには前向きに挑戦しようと思う。


クルタゴサのカマサン画

2018年08月22日 | バリ

   一昨日だったか、調査の帰りにクルンクンの王宮後に残る天井画を久しぶりに見に行く。裁判所跡の天井に残されたカマサン画が、「ビマ、天界へ行く(Bima Swarga)」であることは有名だが、もう一つの建物の天井画が、スタソマ物語であることをこれまでまったく知らなかった。かなりショックである。
   スタソマが母虎に食べられる場面の写真をアップした。残念ながらスタソマの家来になった竜は左側で切れてしまったが、僧侶ケサウォ、象の顔をした家来ガジャワクトラもしっかり描かれている。リアルな表現である。
   観光地からはだいぶ遠ざかった調査生活をしているが、ときには初心に戻って、こうした場所と向き合う必要性を強く感じた時だった。


牛の皮からできるワヤンの素材

2018年08月20日 | バリ

   ワヤンの素材は牛の皮からできています、といってもなかなか実感できないと思います。昨日、バリに数件しかない牛の皮からワヤンやバロン、舞踊の衣装などにつかう皮を実際に作っている場所にお伺いして、いろいろな話を聞き、記録をとりました。長いことワヤンを勉強し、また自分でワヤンを制作してきたにもかかわらず、こういう専門職の現場に足を運んだことはありませんでした。
   まず、その匂いが強烈です。牛の皮ですし、わずかな肉もそぎ落としたものですがやはり生臭いのは仕方がありません。またその匂いは、牛のさまざまな状況(されたものか、すでに死んでしまった牛のものか)によりかなり異なるようです。 晴れた日であれば三日乾かして、4、5時間で両面をきれいにそぎ落とし製品にするそうです。
   クンダンに使う皮、ワヤンに使う皮など、それぞれ牛の大きさの違いもあり、なかなか面白いお話がうかがえました。そぎ落とすには写真のようなパティルpatilとよばれる道具を用います。機械を使わずすべて手作業。話を聞いていて思ったのは、自分たちが伝統的な方法で作り出す皮がいかに良質で、ジャワで作られている物と異なるかが常に強調されていたことです。職人はやはりこうでなくてはいけませんね。自分たちも芸術にかかわる大事な仕事をしているという自信にみなぎっていたことが印象的でした。


カニ・魚・イカ

2018年08月19日 | バリ

   今回の調査グループとサヌールにて会食。はじめて「カニ」を食べた。もともと「カニ」を食べるのはそれほど得意ではなく、自分からカニを食べることはまったくなかったのだが、今回、S教授の勧めでカニメインのお店に決定。カニといっても北海道で食べるような毛ガニとかズワイガニではなく、ふつうのカニである(この表現はいまいちだ)。
   それにしてもカニを食べると誰もしゃべらなくなるというが、まさにその通りだった。しかもカニに取り組む姿勢は、その人の性格を言い当てるような気がした。ちなみに私は最後の一筋まで食べるタイプでは全くなく、「まあこのへんでいいか」と妥協するタイプである。これ、なんだか日々の自分の生き方そのもののようにも思えて少し恐ろしい。
  しかしながら、感想はというと、「辛かった」である。部屋に戻って胃を中和しなくちゃいけないと思い、むちゃくちゃ甘いパンやお菓子をほおばってしまう。中和になるわけないのだが、そういう「言い訳」があれば大好きな甘い菓子がいっぱい食べられるので。