Pの世界  沖縄・浜松・東京・バリ

もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

再会・再買

2015年11月27日 | 家・わたくしごと
 先週、国分寺の古本屋にぶらりと寄ったのだが、すぐに目に入った雑誌があった。懐かしのART VIVANTアール・ヴィヴァンである。実はこの名前のお店がかつて、西武池袋にあった。現代絵画や現代音楽を扱うお店で、私が高校生だった1970年後半から1980年代に通いつめた店だった。ここが出していた雑誌もまたART VIVANTだった。
 1980年代に出版されていたこの雑誌は、アートを扱う雑誌として当時は最先端だったと思う。気に入った号が出るとすぐに購入してむさぼるように読んだ記憶がある。今はこんなに新刊雑誌を読むことはなくなってしまった。しかし民族音楽学を専門にするようになり、雑誌の置き場にも困って、もうかなり前になるが全部古書店に売ってしまったのだった。
 国分寺の古本屋で出会ったのは、売ってからしばらくして後悔をしてしまったART VIVANTのフルクサス特集である。価格は1500円。安い買い物ではないが、これもまた縁。久しぶりに再会して、再買をはたしたのだった。頁をめくるたびに時代をさかのぼっていくような気がする。こんなアート運動にあこがれていた自分がいたんだな、と思うとちょっぴり微笑ましい。

影をつくる難しさ

2015年11月23日 | ワヤン上演
 ワヤンでは人形の影をスクリーンに映すのだが、実はそれが結構やっかいである。まず、ワヤンのスクリーンの構造上、人形全体を影にぴったりつけるのは難しい。重要なのは顔から上半身の部分で、これはどのような動きをしたとしてもスクリーンから離れてはならない。それが複数の人形が登場する場面で、複雑な動きをするとなるとなるとこれまたたいへんである。人形を操る側が、いろいろ考えて動かしてはみても、影にはそれがほとんど反映されないことすらあるのだ。そのために重要なのは、操る側と影をチェックする側が連携した稽古なのだ。
 今日はその練習。私が操り手なので、画面側にはメンバーのK氏が陣取って影の動きや映り方をチェックする。
「右の人形はその位置だと、よくわからない。」
「もっと左の人形を傾けた方がいいなあ。」
「電球を揺らしてみたらどうだろう?」
とにかくいろいろな案を出し合いながら場面を作っていく。一場面ずつこれを繰り返していくのだ。
 さて、今回の自主公演の演目「乳海攪拌」では、須弥山に巨大な竜バスキが巻き付いて、神々と魔物が互いに引き合い、山を回転する場面があるのだが、演目の中心となるこの場面をしっかり作り込んだのだった。静止画であるが、この写真の場面である。いったいどうやって、この竜を引き合い、山が回転するのか?もちろん本番のお楽しみである。

バリ島の影絵人形ワヤン展を開催します

2015年11月19日 | 大学




 なんと浜松の静岡文化芸術大学で、12月11日から1月13日にかけて(日曜日、12月23日~1月7日休館)、バリ島の影絵人形ワヤン展が開催されます。入場無料。しかも、ワヤンが体験できるワークショップ(12月12日)、ワヤン上演(19日)があります。すべて無料というすごいイベント。
 これまで沖縄の浦添市美術館で開催したことはありましたが、バリのワヤンをこのような形で見ることのできる展覧会はほとんどありません。日本ではもちろん、インドネシアでも珍しいと思います。
 ギャラリートークは、12月16日(水)、19日(土)、1月12日(火)の12時20分から30分間。
 ワヤンのワークショップ【体験型】は、12日の14時から15時30分。
 ワヤン上演は、12月19日の14時から2時間程度を予定。演目は「乳海攪拌」です。

 ギャラリートークは申込みは不要です。
 ワークショップは、定員10名程度。お申込みはメールで。メールタイトルに「ワークショップ希望」とお書きいただき
 m-tachi@suac.ac.jp
までお送りください。
 ワヤン鑑賞もお申込みの宛先は同じですが、メールタイトルに「ワヤン鑑賞希望」とお書きいただき、お申込みください。

 お問い合わせは、
 静岡文化芸術大学 立入(たちいり)研究室 電話053-457-6187  e-mail: m-tachi@suac.ac.jp
  

「宇宙を戴く」研究会から学んだこと

2015年11月09日 | 大学
 先週の土曜日、神戸芸術工科大学で「宇宙を戴く」と題した研究会があり、それにスピーカー、また演者として参加した。この研究会は、神戸芸術工科大学の科研による研究会で、バリ舞踊「ジャウク Jauk」の冠に焦点を当て、最初と最後に、バリの舞踊家によって実際にジャウクが上演された。
 冠は、舞踊にとって重要な「道具」である。いろいろな舞踊により冠は異なることはバリの芸能をやっていれば誰でもわかることだ。演奏者は時に、舞踊家はほんとうにたいへんだと思うもので、なぜなら踊りごとに違う衣装や、革細工の高価な冠を準備しなければならないからである。バリでは舞踊のレンタル衣装屋がある。踊り手が各自衣装を持つのは不可能であることから、レンタル業が成り立つのである。それだけバリ舞踊が盛んであるという証でもある。日本でも結婚式、卒業式などのドレス、着物、袴などはレンタル衣装であることが多い。まさに舞踊の衣装がそれなのだ。
 ところが、私自身も踊り手の道具、衣装をそうした視点でしか見ていなかったのだ。しかしこの研究会は、ジャウクの冠が「マンダラ」の立体的な形態を持つことに注目した。いわれてみればその通りだ。確かに中心は須弥山で、火や水を象徴するような形が革細工の中にいくつも見られるからだ。そこから、この踊りは何を象徴するのか、ということにつながっていく。
 バリの芸能と関わってもう30年以上が過ぎた。しかし、まだ気づかないこと、わからないことだらけだ。それも、ふだん接しているもの、身近に存在していることにもそうしたことが溢れている。にもかかわらず、「当たり前」すぎて、「なぜ」という疑問そのものを持たなくなっている。こうした研究会や異なるジャンルの人々の目線、発言はこうした「なぜ」に気付かされるものだ。今回の研究会を通して多くを学んだ。製作中のワヤンの図鑑にもこの「冠」の視点をしっかり取り入れなくてはならない(ちょっと作業がストップしているのだが)。