いのしし くん。

政治、経済から音楽全般の評論
ultimate one in the cos-mos

地震科学の敗北。 seismological defeat

2013-05-29 20:03:08 | 日記
 (1)科学も万能だと思われてきたが、最近はそうとも言えなくなってきた。パラドックス(paradox)としてそれが科学の「進歩」だともいえる。
 地震国日本で、研究専門家組織の日本地震学会は東日本大震災での予測をはるかに超える巨大地震にすっかりそれまでの自信を失って、地震予知の領域から撤退を宣言し、政府の中央防災会議は「巨大地震を予測することは『不確実性を伴い困難』と結論(報道)」づけた。

 中央防災会議や地震予知連絡会は、巨大地震発生の「可能性」とその「備え」について提言するしか方法論を持たない。

 (2)これまで東海沖巨大地震の発生が確実視されてきて、日本で唯一観測機器を設置して地震予知体制がとられて法整備(大震法)され、発生2日前(前兆現象)には地震発生情報を発信できるとされてきた。
 専門家からはここ30年の間に80%の確率で発生することも言われている。過去の地震発生の歴史、周期から地震発生の可能性は考えられてきた。

 (3)地震発生のメカニズム(陸側プレートと海側プレートの境界がズレて発生)はあきらかで、このメカニズムの前兆現象を観測することで地震予知は可能と考えられてきた。
 しかし、そういう地震研究の延長線上にあった東北太平洋沖海域を震源とする東日本大震災が予測をはるかに超える巨大地震であったことから、研究者の研究基盤、自信そのものが同時に崩壊したのだ。

 (4)今回の中央防災会議の専門家調査部会は「前兆すべりを検知する前に『いきなり地震が発生する』ことや『検知されたとしても地震が発生しないことはあり得る』」として、つまりどういうこともない「何でもあり」の予測不能という困った結論だ。

 変に知ったかぶりをして国民に信頼されるのも被害が実際に起きた時(発生確率は高い)の認識の落差に責任を持てずに、それなら「わからない」として確実な発生事後対策(避難)、備えに目を向けるしかないというのは、極めて良心的な安全策ともいえる。
 科学研究への信頼感、期待感などと言っていられない、なりふり構わない現実的対応、姿勢をどう評価するかだ。

 (5)そこで家庭備蓄7日分確保という「いつくるか」わからない巨大地震への現実的でない超現実的(surrealistic)備え、事後対策の提言となる。
 確率の高い不安を煽(あお)るだけ煽っておいての(発生確率が高いから仕方もないことだが)事後対策の超現実的必要性というのも、(防災)地震科学の敗北(seismological defeat)だ。

 科学にはもちろん「できること」と「できないこと」の良心はあるが、「できないこと」を克服する確信もある。

 (6)それでも地震国日本としては、地震研究、地殻研究にまい進、挑戦することが求められている。
 地震予知技術開発、減災(津波抑止、耐震、避難ほか)研究と事前対策も大事だ。研究挑戦意欲に期待したい。

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