いのしし くん。

政治、経済から音楽全般の評論
ultimate one in the cos-mos

21世紀構想懇談会の報告書。 a design of 21th century

2015-08-07 20:05:21 | 日記
 (1)日本はこれまで二度にわたる世界大戦の検証、分析、評価を国として行ってこなかった。今でも世界大戦の意味、意義について、日本は欧米の経済進出に対抗する大東亜共栄圏確保のためにアジアに軍部を進出したと正当性を主張する話も聞くが、突き詰めれば天皇戦争責任論に突き当たるので、うやむやにしてきたというのが本意だろう。

 安倍首相が来週に発表する「戦後70年談話」のための意見書として、私的諮問機関(private advisory organ)の「21世紀構想懇談会」が報告書をまとめて安倍首相に提出した。

 (2)機関名は大上段に振りかぶった大層なものだが、安倍首相の私的諮問となれば誰が注文をつけることなどできないし、この「21世紀構想懇談会」から「戦後70年談話」の基本方針がよくわかるものだ。

 安倍首相がかねて主張してきた日本の戦後平和の歩みを継続して未来志向を目指す内容となることが見てとれるものだ。
 提出された意見書のなかでは20世紀の歩みのなかで、国際情勢の流れ、分析を通して日本がアジアに進出していった経過を述べて、「30年代後半から植民地支配が過酷化」し「30年代以後の日本の政府、軍の指導者の責任は誠に重い」と指摘している。

 (3)戦争責任については表面的な分析にとどまって、いろいろ考えられる周辺理由について列挙して日本の政府、軍の責任の重さは認めながらも、責任判断の自由裁量を残したものとなった。

 欧米の経済進出からアジアの独立を守るかのような日本のアジア進出を思わせる内容も併記しており、とってつけたように「30年代以後の政府、軍の指導者の責任は誠に重い」では比較比重の重さがあいまいだ。

 (4)もちろん天皇の立場、責任については論じられてはいない。戦争責任論は意見書のなかでも前半の一部分だけの少量で、これを安倍首相がどうくみ取って言葉にするのか、意見書だけを見れば日本のアジア植民地支配の評価について体裁は保ちながらも自由裁量の範囲を示したものとなった。

 「戦後70年談話」のための専門家懇談会ということで戦争責任については踏み込んだ内容にはなっていないが、せっかくの専門家による20世紀からの日本の歩み、検証なのだから、戦争歴史検証をどこかできっちりとつけてもらいたいとこころだ。

 (5)当初「戦後70年談話」は発表される意味、意図がよくわからないものであったが、安倍政権が憲法学者、国民の多くが違憲だと主張する安保法制案を国会に提出して成立を目指してからは、同盟国との戦闘地域での集団的自衛権の行使が過去の旧日本軍によるアジア植民地支配の反省認識を踏まえて、どう説明するのか安倍首相の基本理念が求められるものに変わった。

 (6)そういう意味では意見書の中、後半の大きな部分を占めた欧米各国、中国、韓国との和解の70年の記述は重要ではなかった。
 はからずも極めて国内問題の「戦後70年談話」が中国、韓国、EUからも注目を集めるようになって、日本だけでない世界大戦の反省について意見書は深く分析、検証すべきであった。

 (7)唯一の戦争被ばく国日本として世界平和、核兵器のない世界実現に向けての役割、責任は重いものがあり、アジア植民地支配と同列で反省し、くり返してはならない決意が求められている。

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