いのしし くん。

政治、経済から音楽全般の評論
ultimate one in the cos-mos

歴史物とバリアフリー。 historic legacy and barrier free

2017-11-22 19:59:25 | 日記
 (1)たとえば人間国宝がつくった逸品は使ってこその価値があるものだが、もちろん見ることはできても手に触れることはまずできない。古代、歴史的遺産(historic legacy)は唯一のもので同じものを二度とつくることはできない現在、未来にわたる人類全体、共通の財産だ。

 歴史的価値が高いので、極端にいえば見ることさえできないものもある。写真、映像で見る機会はあるが、本物の歴史、時代の息吹、空気は本物を見ることによってしか伝わってはこないものだけに、やはり本物を見たいのは本心だろう。

 (2)名古屋市の河村市長が名古屋城天守閣を建てられた時代と同じ木造構造として復元する計画を打ち出して、具体的な計画が進められている。世界でも例を見ないつくられた時代と同じ木造構造による本格的な名古屋城天守閣復元計画で、名古屋の観光のシンボルとして価値をさらに高めて世界から観光客、入場者を呼び込もうというものだ。

 名古屋城の建てられた時代の設計図がそっくり残されていたことから計画が可能になったもので、たしかに限られた貴重な復元計画といえる。

 (3)減税政策を主導する名古屋市の河村市長が建設費数百億円ともいわれる大事業で市財政を圧迫するという懸念、見方もあり、河村市長は名古屋城天守閣復元後の入場収入の増加に建設に寄付金を募ることで対応はできると説明している。

 (4)現在の焼失後再建された鉄筋コンクリートの天守閣はエレベーターが設置されており、入場者の観覧に配慮されている。河村市長は天守閣復元にあたっては、あくまで設計図が残ったつくられた時代のままの木造構造にこだわり、エレベーターを設置しない方針を示している。体の不自由な入場者に対しては、ボランティアなど人が介添えをして抱えてあがる案を提案していた。

 (5)請負建設事業者の天守閣復元案には、階段の壁にレールを取り付けて「チェアリフト」でのぼる案(報道)がつけられている。これに対して障害者団体からは「車いすやベビーカーの利用者、足腰の弱い高齢者を排除する」(同)として、またそれら多数者を一度に誘導できないとして反対の声があがっている。

 冒頭に述べたようにつくられた時代のものを直に手にできることに本来の歴史的価値、意味があるといえる。

 (6)河村市長があくまで歴史的、時代的そのものの名古屋城の木造構造天守閣復元にこだわるのなら、もはや誰もが入場できなくて歴史的展示物のように外観から見学するしかない。

 それが歴史的、時代的遺産のこれまでの残し方、考え方であり、そういう歴史的建造物も多い。

 (7)それでは観光資源名目として不十分であり、つくられた時代観、歴史観を肌で感じ取ってほしいという先進的な考え方であるなら、バリアフリー(barrier free)の現代性を取り入れることは避けられない。

 つくられた時代観、歴史観と現代観が適当に混合した歴史物こそあたらしい時代の要請であり、先見性といえるものだ。
 名古屋市では今年度中にエレベーター設置について最終判断をする。

 

 

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