無視しうる危険。 we can have a disregard of this hazard

　(1)関電大飯原発３，４号機（福井県）の運転差し止め控訴審で、名古屋高裁（金沢支部）は初めてとなる高裁判決として差し止めを命じた１審判決を取り消し、住民側敗訴の判決を下した。

　各地の原発差し止め裁判訴訟は差し止め、また取り消しが相次いでおり、司法としても判断が大きくわかれる判決が続いている。

　(2)政府の中長期的なエネルギー基本計画では、原発を重要なベースロード電源として維持していく方針を示しており、政府のエネルギー政策が司法判断にも影響していることが伺える。

　今回の大飯原発差し止めの取り消し判決では「原発の危険性は社会通念上、無視しうる程度にまで管理・統制されている」（判決報道）として政府方針を踏襲する極めて大胆な判断を示した。

　(3)東日本大震災以後、原子力規制委員会の安全新基準による原発再稼働審査の適合を全面容認する司法判断で「福島事故の深刻な被害の現状等に照らし、廃止・禁止することは大いに可能」として「判断は、もはや司法の役割を超えている」（判決報道）と政治判断にまかせる姿勢をも示した。

　(4)１１年福島第一原発事故では今でも数万人の住民避難生活が続いて、事故現場の全容解明もままならずに福島第一原発事故の原因究明も出来ない状況の中で、原発の危険性が「社会通念上、無視しうる程度にまで管理・統制されている」とはとても言えない現状認識であり、今回の大飯原発差し止め控訴審訴訟での高裁判断には政府政策寄りの側面が色濃くみられる。

　(5)「判断は、司法の役割を超えている」高裁判断にもあらわれている。南海トラフ巨大連鎖地震が３０年の間に８０％の確率で起きるとの専門家の指摘もあり、予測不可能な事態（統計上の被害状況マップは発表されているが、地震予知そのものが専門学会では不可能だとしている）が指摘されている中で、とても原発の危険性が無視しうるまで管理・統制されているとは考えられない大飯原発（福井県）の差し止めの取り消し判決だった。

　(6)上告されて最高裁がどういう判断を示すのか、判断は司法の役割を超えているでは三権分立の司法の独自性が問われる問題だ。政府としても原発への「依存度は可能な限り低減していく」（基本計画）としているのだから、切り替えは早い方が有効で持続可能性（sustainability）は高くなる。

　司法判断は何より住民の安全、生活、権利保障が優先されるべきものであり、まずは福島第一原発事故の全容解明に向けて政府、東電側の責任履行を促す必要がある。

　(7)原発神話（原規委の安全新基準神話）のくり返しは認められない。