経済は生きもの。 economy is a living thing

　(1)今年のノーベル経済学賞は最低賃金の上昇が必ずしも雇用の減少につながらないことを「自然実験」手法で労働市場を分析して確認した米大学３教授が授賞した。日本では都道府県別の最低賃金の格差が問題になって、安倍、菅政権で最低賃金の引き上げが実施されて企業、事業者からは人件費のコスト増加による経営圧迫につながるとして反対の意見がみられた。

　(2)ノーベル経済学賞の研究によれば最低賃金を引き上げても必ずしも雇用の減少につながらない労働市場環境があると実証されたわけで、時宜を得たタイムリーな研究発表授賞だった。北欧社会で実施されているベーシック・インカム（basic income）も最低生活費を保障されれば国民は働かなくなるとの懸念もあるが、北欧社会では国民の労働意欲が向上するという傾向が指摘されている。

　(3)生活費に不安がなくなれば国民はさらに豊かな生活、自立、目的を求めて、目指して労働、収入に向かうという経済原理、理論だ。経済は生きもの（economy is a living thing）といわれるが、人間社会の普遍性、正論、パラダイム（paradigm）、理念では測り知れない自由で自主、目的、意識、自発的な論理、行動が左右する逆転発想の経済社会の反発力でもあることがわかる。

　(4)企業経営は価値が変動しない法定通貨の貨幣（カネ）ではない実体のない株式、株価で評価されて、買いが集中すれば株価は上昇し、売りが集中すれば株価は下落して企業資産は大きな影響を受ける。

　経済は生きものを反映、実践しているわけだが、企業利益、資産を見かけ実体をより大きく成長、向上、期待させる商法として活用してきた。

　(5)株価、株式市場の動向に一喜一憂することになるが、法定通貨の貨幣にはない固定された利益、収入ではない企業努力、成果、期待が評価額での価値利益につながり、結果として反映する法定通貨の貨幣の価値、流通効果を高める仕組みが経済だ。

　株式、株価は実体をともなわないので下落すれば紙同然（株券）にもなり、経済は生きものといわれる。

　(6)最低賃金が引き上げられれば企業経営、雇用を圧迫するという企業論理に対して、しかし労働力の意欲、目的、意識のダイナミズム（dynamism）にもつながり、企業成長、利益向上につながることは考えられる一面性でもあり、経済の多様性（diversity）、反発性、意外性でもある。