(1)世界銀行の試算によると世界の食料価格が1%上昇するごとに1000万人近くが「極度の貧困」(1日約248円未満)に陥り、日本でも(低所得層を中心に)打撃となる(報道)と指摘した。
米国は8%の物価高騰でインフレが加速しており、FRBは金利引き上げに踏み切り金利引き下げの日本との格差が急激な円安ドル高を生じて輸入価格の高騰につながっている。
(2)4月一斉値上げの日本の物価上昇率は2.1%となり、日銀黒田総裁がデフレ脱却のために就任以来物価上昇2%達成目標を示しながら9年越しでようやく目標の物価上昇2%達成目標に達した。
国民にとってはガソリン、エネルギー、食料品(1万件以上)、鉄道運賃と何から何まで4月から軒並みの物価値上げが続いて家計を圧迫している。
(3)それに対して当の黒田総裁は問題発言の「日本の家計の値上げ許容度も高まってきている」として、「ひとつの仮説」として「家計が値上げを受け入れ始めたのは、新型コロナウイルス禍の行動制限により家計の貯蓄が増えたことが要因となった」(報道)と指摘した。
「仮説」で都合よく家計の値上げの許容度が高まったといわれても、日銀の思惑にかなった物価上昇であり大企業の賃上げ2.2%はあっても中小企業には波及せずに軒並みの物価値上げは家計を圧迫している経済格差構造だ。
(4)家庭内資産が増えたことはコロナ、原油高騰で先行きが見えない中で家庭、家計の自衛本能が働いたもので、銀行預金の低金利時代で貯金よりは家庭内資産として保有しようという国民の生活防衛本能だ。
黒田総裁は念願の物価上昇2%達成目標が世界的原油高騰で思わず実現できた達成感なのか余裕のある心境で「家計が値上げを受け入れ始めた」の解釈であり、同時に発表された世界銀行の価格試算(食料価格1%上昇で貧困1000万人)との大きな感覚の隔たりを感じるものだ(本日、黒田総裁は同発言を撤回した)。
(5)また20年ぶりの1ドル133円の急激な円安は「我が国経済全体として見れば、プラスに作用する」(報道)として、先日安倍元首相も円安は輸出産業、観光事業には好材料だと歓迎の意向を示していたがアベノミクスをともに支えた二人にとっては大企業、富裕層優先政策を歓迎するもので、それにより生じた経済格差社会に苦しむ国民多数とは思惑の違いがはっきりと出た。
(6)国家累積財政赤字は1200兆円となり国債を大量に買い取る日銀が支えており、将来の国民投資(税負担)への先送り負担は大きくなるばかりで、黒田総裁の家計の値上げ許容度の高まり発言ともども大企業、富裕層しか向いていない経済金融ギャップ(a gap of economy and finance)だ。