(1)戦争には領土拡大とともに相手国の純粋利益を吸収する、奪う側面もある。ウクライナ戦争では軍事侵攻した露軍がウクライナから小麦など穀物を搾取しているとの報道もあり、食料安全保障(the security of provisions)も大きく浮かびあがっている。
露はクリミア半島を強制編入して、東部の港湾都市マリウポリを制圧してウクライナの重要穀物小麦の輸出を拒んで、これに頼るアフリカなど世界の食料事情に大きな暗い影を落としている。
(2)日本も例外ではなく小麦の輸入が影響を受けて食料品の値上が相次いで、ウクライナ戦争の対露経済制裁の影響で露産石油禁輸によるエネルギー不足、価格の高騰を招いてウクライナ戦争の影響を直接大きく受けている。
国土の狭いところは産地と消費者が近く利便性が高いが、手間をかけた良質の生産量が限られて比較価格が高く、広い国土で機械化により効率的な生産主流の安い価格の外国産食料品に市場を奪われる不利もある。
(3)食料自給率の確保がいわれているが、近年は外国との経済協力協定の促進で安価な外国産農産物、食料品、生産物の輸入を多く受け入れることになり、食料自給率が下がり比較品質、味、技術力、良質の高価格の国内生産者は経営的に自立できない、外国製品に太刀打ちできないでいる。
(4)食料安全保障の重要性がいわれて、もちろん潜在能力の高い日本の農産物、食料品は品質、味、技術力の高さで逆に輸出に転じて、世界的な健康食品日本食のブームもあって初めて1兆円を超える輸出力、輸出産業にまでなっている。
(5)そうした中でのウクライナ戦争は日本にとっては食料安全保障の重要性を認識させて、エネルギー、食料にコロナ社会で利用客の減った鉄道運賃の値上げまで加わり大きな影響を受けている国のひとつだ。
(6)日本は中国の海洋進出、北朝鮮の核、ミサイル開発の脅威で防衛力強化、防衛費増額が表面化しているが、食料安全保障への対策も大きな課題だ。世界どこでも戦争が起きれば資源力の乏しい日本はエネルギー、食料で大きな影響を受けるグローバル社会であり、防衛力、防衛費ばかりを考えてはいられない。