(1)米国ブリンケン国務長官の自身初の訪中では習主席も会談してバイデン政権への配慮をみせたが、米国側が望んだ国防当局間の対話再開には「同意しなかった」(報道)といわれる。
台湾問題、南シナ、東シナ海の中国の海洋進出に懸念を強める米国、日本に対して、国防、軍事問題では他国の干渉を排除する中国の強硬姿勢を示す結果となった。
(2)ブリンケン国務長官の訪中2日前には、習主席が米IT大手マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏と会談して、李強首相も米IT大手CEOと相次いで面会して厚遇して(報道)、中国の米中経済関係重視の取り組み姿勢をみせて米中の思惑の違いもみられた。
(3)米国は来年11月に大統領選を控えており、民主党バイデン大統領と共和党トランプ前大統領が争うとみられており、中国側としては米中経済戦争を仕掛けたトランプ前大統領時代への逆戻りは避けたい意向も見える、今回のブリンケン国務長官の訪中対応に映る。
バイデン大統領も近々での習主席との米中首脳会談を希望しており(報道)、その調整ともみられるブリンケン国務長官の訪中を「大きな仕事をした」とねぎらった。
(4)バイデン大統領としては米中首脳会談を実現して来年の大統領再選に弾みをつけたいところであり、懸案事項の違い(国防当局間の対話)が大きい中でのブリンケン国務長官の訪中となった。
一方で中国は欧州との関係強化に動いており、仏マクロン大統領、独ショルツ首相を相次いで招いてNATOの米欧分断を狙っているともみられる。マクロン大統領は台湾問題で米中どちらにも属さない発言やNATO東京事務所開設に反対意向を示しているといわれて、中国の目論見は成功しているとみられる。
(5)米国は日米豪印のクアッド、開かれたインド、太平洋構想などいくつかの協力国結束で中国の海洋進出に対抗し中国包囲を強めており、中国も国防、軍事問題では他国の干渉を許さない強硬姿勢で米国と国防当局間の対話を拒否している中で米中両国間では話し合う緊急課題もみあたらずに、この時期での米中首脳会談は米中首脳の来年米大統領戦後に向けた思惑が優先するものだ。
(6)日本も米国も来年後半には政治リーダーの選択を迎えることになり、今後はそれに向けた政治行動、選択への色濃い判断が出てくるものと考えられる。岸田首相もバイデン大統領もそれぞれに問題、課題を抱えており、これからの1年は政治が流動性を持つことが予想される。