(1)米英仏中露の核保有国が昨年1月に先制して核兵器を使用しないことを合意したと発表があった。国連加盟110か国、地域以上が参加して核兵器禁止条約が締結されて、これに核保有国が参加しないことに国際的非難の高まりを受けてこれに対処しようと核保有大国が冒頭のような合意をしたと報じられている。
(2)今年5月のG7広島サミットでは米英仏の核保有国首脳がその他G7国首脳と揃って原爆資料館を訪れ、慰霊碑に献花して核軍縮に向けての結束を示した。しかし、冒頭の先制して核兵器を使用しないと合意した露プーチン大統領はウクライナ軍事侵攻では何度も核兵器の使用を示唆して、核保有5か国の合意は守られる見込みは薄い。
(3)この露で露軍とともにウクライナ軍事侵攻に参戦している露の民間軍事会社(組織)「ワグネル」が露軍の攻撃を受けたとして露国内で露軍と戦闘状態に入っている(報道)といわれてモスクワを目指している。
ワグネルの創設者はこれまでも露国防相に対して反抗的、非難的な発言が続き、プーチン大統領にも反旗を翻(ひるがえ)したともいえる露国内での反乱、内乱だ。
(4)プーチン大統領はワグネルの行動を「反乱」(rebellion)と指弾(報道)しているが、露軍と露の民間軍事会社(組織)ワグネルとの戦闘、国内反乱は「核保有国」内での政府、軍と反乱組織の戦闘であり、これまで類のないもので核兵器の安全性、保全性、管理を含めて異例の事態、展開となっている。
(5)露軍と民間軍事会社(組織)ワグネルの戦闘で余程のことがない限り露軍からワグネルに同調、行動を同じくする反乱革命が起きない限りは、プーチン大統領、露国内の混乱は収束に向かうとみるのが一般的だが、露国内では抑圧、抑制された国民が反乱軍とともに立ち上がるということにでもなれば「核保有国」ではこれまでにない展開となり世界の安全、平和に対してこれまでに経験のない危険な事態、危機を迎える。
(6)今回はそこまでは進展しなかったが、今後起こり得るあたらしい世界の危機として対策が必要だ。ワグネルは通常では兵力、兵器で露軍に勝ち目はないので、早々に軍事進行を中止し、プーチン大統領も被害影響を抑えるためワグネル側に譲歩したといわれる双方痛み分けとなった。
(7)上述の核保有5か国は13,14日にもカイロで核攻撃などに関する実務者会合を開いて(報道)いるが、核保有国で政府軍と民間軍事組織が戦闘するというこれまでに類のない国内反乱にどう対処するのか、まったく新しい核時代の世界の安全と平和にかかわる重大な核兵器の安全性、保全性、管理問題に直面することになる。
(8)独立国家の主権、安全、国益、機密にかかわる問題なだけに、核兵器の安全性、保全性、管理に対して他国が容易に関与、かかわれる問題ではなく、核保有国での政変、反乱、内乱の可能性は国際社会にも経験のないまったくあたらしい核問題の危険性、危機を知らしめる重大問題だ。