(1)経済財政運営の指針となる「骨太の方針」の政府原案が公表されて、長年勤続雇用体制を見直し、格差を是正し労働移動を促す労働市場改革(innovation of labor market)を打ち出した。
かって原発再稼働にあたって高度な技術力、開発力を維持する、伝承するための必要性が述べられたことがあるが、日本のこれまでの労働市場は終身雇用制で企業の技術力、開発力、能力を維持、伝承することが求められて世界に日本企業の技術力、開発力、能力、商品力の高さが評価されて、日本の終身雇用制が見直された、評価された時代もあった。
(2)原発事業に限ってみれば福島第一原発事故を受けて原発が停止されて技術者が職場と賃金を求めて海外に移動して日本企業の高度な技術力、開発力が維持されずにその後の日本企業のコンプライアンス欠如、検査など不法行為、不正行為の劣化につながったとみている。台湾、中国、韓国企業の躍進で日本の主力企業が台湾企業の傘下に入るなど企業力の低下もみられる。
(3)その後情報化時代、社会を迎えてIT、AI革命で企業の技術力、開発力、商品力の伝承はグローバルスタンダード時代を迎えて、労働市場も一企業にこだわらずに世界市場を目指して海外を視野に流動的、活動的になり、日本企業はIT化、AI化に乗り遅れて台湾、中国、韓国企業にも後れを取る事態を迎えている。
(4)今回の骨太の方針では長年勤めるほど優遇される退職金課税制度を見直して、労働移動、スタートアップ、ベンチャー事業、リスキリングを促す労働市場改革が盛り込まれた。労働市場改革はいいが、失われた日本企業力の低下、コンプライアンス欠如、検査不正など不法、不正行為を是正してIT、AI革命時代に存在感を示していけるのか、どうつなげていくのが日本経済の課題だ。
(5)政府はデジタル庁を設置してこれまでの政府機関の縦割り行政から省庁横断型行政の一体化を目指しているが、「マイカ」のデジタル化では構想準備不足のまま一体化を進めて誤登録、認証、発行が相次いで国民の信用、信頼を失っており、IT、AI化に前のめりだけでは問題、課題は解決しない。
(6)政府は骨太の方針で岸田首相の唱える「分配論」をどうつなげて効果、実効性を示せるのかが問われている。