何時もながら前置きが長いですが、ここからが本題です。
七十七銀行です。地元仙台の銀行で、東北最大の地方銀行です。バブルに踊らず不良債権の額も軽微でした。行員の給料も都市銀行に近い水準の凄い銀行です。この銀行の行員はチョットした街の名士の様に見られます。それだけ知名度は高いです。
地元仙台には陽シティ銀行(旧・陽相互銀行)なる第二地銀がありました。バブル期に七十七銀行に追い付け追い越せの勢いがあった銀行です。実は新聞販売店やっていた時、取引がありました。
一応、新聞販売店やっていた時、私の店は同行某支店の一番の取引先でした。それで良い不動産物件を紹介されてり、良い付き合いをしていました。
しかし、バブル期に頑張りすぎた。そしてバブル崩壊。結果、不良債権の山を築いて倒産しました。
私、つくづく思いました。頑張りすぎは良くないと。私の様に何もしないのもどうかと思いますが、良い時こそ冷静になるのが生残るコツだと思いました。陽シティ銀行と七十七銀行を見ていてつくづくね。世の中って本当に皮肉なものですわね。
まっ、その七十七銀行ですが、私の出身大学からは、私が学生当時、毎年10名ほど採用されてます。その10名は私の出身大学の英雄です。
しかし、私の大学は七十七銀行の採用大学の中では偏差値的に最低レベルの大学です。採用された10名はどさ回りとは言わないけど、本店勤務はかなり難しいと聞いていす。出世するのも大変で、大抵は支店勤務で始まり、支店勤務で終わると聞いています。支店長になるなんてよっぽど営業成績が良くなければ至難の業なのでしょうね。支店長に成れたとしても宮城県の凄い田舎の支店がせいぜいかも。まぁーね、学歴社会ってのは辛いもんですわね。
さて、お題の七十七銀行女川支店です。
私、女川には釣りをしに随分通いました。私の好きな町です。海の側のファミリーマート前駐車場では、よく車中泊したもんでした。
このファミリーマートの直ぐに七十七銀行の女川支店があります。海から100メートルも離れていない場所です。
そして3.11の東日本大震災。
女川には15メートルの津浪が襲いました。入り江の地形だった為、15メートルまで高くなったのです。
この女川支店の全行員は14名。うち、地震直後帰宅した方が1名。残り13名の行員の内、津浪に飲まれ生残った行員は1名。つまり12名の行員が亡くなっています。
何故、12名もの命が失われたのか。
もし私が自分の店を女川に出していたとして、震度6強の地震にあえばそりゃ当然逃げます。私は心配性ですし、大きさは判りませんが、津浪が来るのは明らかですから。
せいぜい防波堤をチョット超える程度の津浪だと思っても、私のやっている商売なんかその程度のもんです。全ての商品が駄目になっても仕方ないですみますから、先ずは逃げますね。
しかし、人の金を預かっている銀行ではそうは行かないです。
実際、地震が来てから女川支店の行員達は、重要書類や紙幣を金庫に仕舞う作業を行なっていたと聞いています。その作業を完了してから津浪到達までは30分の時間がありました。
1分も走れば津浪から逃れられる高台があるのに、彼らは何故逃げなかったのか。
それは仕事への使命感でしょうね。私が女川支店で万が一支店長していたとしたら逃げなかったかも。いや、逃げられなかったかも知れません。
津浪を恐れて逃げ、その間に不届き者が銀行に入り金を持って逃げたりでもしたら、支店長として責任問題になるでしょうからね。 仮に支店長である自分だけが残ると言っても、他の行員はどう思うでしょう。支店長残して逃げたとあっては、会社への忠誠心が疑われます。出世に響くかも知れません。私が仮に次長だったら、「支店長だけにいい格好させてられっかい。ワシも残るでぇー」と思うかも。
それでなくても失敗が許されない銀行員の人生です。もし津波が来ず空の銀行に強盗に押入れられたら、銀行員生命はお終いです。そう思うと怖くてとても逃げられないと思います。
勿論、15メートルの津波が来ると知っていたら逃げていたでしょう。しかし、情報では3メートルの津浪と発表されていました。3メートルなら屋上に退避すれば何とかなります。逃げることはしなかったでしょうね。
次に6メートルの津浪に訂正された様ですが、それでも屋上に逃げれば何とか・・・・。 それより本店の指示はどうだったのでしょうか。やっぱり現場に居なければ分からない。いや、現場にいても判断は難しいでしょうね。
支店は二階建ての建物ですが、銀行ですからね。店舗フロアの天井は一般の建物より大分高い筈です。私も2階建てだとは思えませんでした。それだけ割と大きめな建物だったのです。それに屋上への階段の建物を入れれば3階の高さがあります。通常の3階建ての建物より大分大きめです。それなら何とかなるかなぁーと思うかも知れません。
その時、現場にいればどう判断したでしょうか。 難しい。本当に難しい判断だと思います。
13名の行員は津浪で全員流され、1名のみ船で救出。残りの12名が死亡してしまった訳ですが、これは銀行員と言う職業を選んでしまったからなのかも知れません。殉職と言えると思います。
私は怖くて人のお金を扱う仕事から逃げた訳ですが、銀行員と言う仕事に誇りを持っていた事が死に繋がったと考えるとやり切れないですね。
亡くなった社員の遺族達は、銀行を相手取って裁判している様ですが、誰が悪いのかが判らない裁判です。支店に留まる事を決意した支店長も亡くなっていますしね。遺族の方の悔しさも計り知れないでしょうね。
多分、支店内には最低数千万円のお金があったと思います。その数千万円は人様の大切なお金です。しかし、亡くなった12名の命の方がずっと尊い筈です。それなのに命よりも下のお金を守る為に亡くなってしまった。本当に矛盾しています。
本当に世の中、皮肉なものだと思いましたわね。
ではでは。