ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

プロレスってさ ジョニー・バレンタイン

2010-03-09 12:31:00 | スポーツ
金髪の毘沙門天、それがジョニー・バレンタイン。

とにかく目が怖い。ギョロっと碧眼を見開いて睨まれたら、蛇に睨まれたカエルよろしく固まってしまう。たまたまプロレスを観た歌舞伎役者が、その目をみて「あれこそ目千両だ」と羨望したほどの眼力。

しかも、この人は強かった。まだ若かりし頃のタイガー・ジェット・シンがアメリカでの修行時代、全米各地の若手白人レスラーをぶちのめして、悪評を高めていた時だ。インド・レスリングの基礎がしっかりとした上に、凶暴な反則ファイトを得意とするシンの増長ぶりを懲らしめるため、派遣されたのがバレンタイン。

試合は壮絶な喧嘩勝負となり、TV放送が中断されるほどの凄まじさ。リングには血が飛び散り、巻き添えになったレフリーが気絶するのを横に、血まみれで勝利の雄叫びを上げたのがバレンタインだった。シンはぶちのめされて、バレンタインの足元で悶絶していたという。

私はダビングを重ねた古いビデオで観ただけだが、血まみれの顔にもかかわらず、その鋭い目が輝いている姿に戦慄を覚えたほどだ。戦い方は、レスリングがベースだが、なにより肘打ちが上手い。

肘の固い部分を使った打撃は、接近戦では頭突きと並ぶ有効な戦い方だ。その肘打ちを連打して、シンの顔面を血染めにして視野を奪い、戦いを有利に進める喧嘩上手に感心した。

喧嘩の強さなら、シンも相当なものだが、気迫の凄まじさで圧倒していたのはバレンタインの方だった。あの凄まじい眼で睨みつけながら、一歩も引かずに殴りあう姿は恐ろしくさえあった。

凄い奴がいるもんだ。

日本で初めて観たのは、猪木が独立して新日本プロレスを打ち立てて、ようやくTV放送が始まった頃だった。この試合が、また凄かった。

実はバレンタインは、あの強面にもかかわらず、典型的なマイホーム・パパであったらしく家族の元を離れる遠征を嫌っていた。そのせいで世界チャンピオンにはなれなかったと噂されたほどだ。世界各地を転戦するなんて、真っ平だったらしい。

だから、金を詰まれただけでは海外遠征には応じなかった。そこで猪木は、かなりバレンタインを挑発したようだ。その挑発に応える形での来日だったので、試合はかなり荒れた。

普通招聘された外人レスラーは、興業主(プロモーター)である猪木には敬意を払って、勝ちを譲ったり、見せ場を作ってあげることが多い。

バレンタインもプロだけに、或る程度試合をつくることには協力していたように思う。試合自体は猪木の勝ちであったが、試合を観た限り優勢だったのはバレンタインの方だった。

いや、圧倒的にバレンタインの迫力に猪木は押されていた。さすがにタイガージェット・シンにガチンコの試合で勝っただけのことはある。

気の強い猪木も、このバレンタインの依怙地さには根を上げたようで、そのせいで来日回数は非常に少ない。見応えのあるレスラーだけに、いささか残念でならない。

余談だが、息子さんのグレッグもプロレスラーになったが、残念ながらあの眼光の鋭さまでは引き継げなかったようだ。

その鋭い眼光だけで相手を威圧した金髪の毘沙門天は、私の記憶に残る名レスラーでした。
コメント (2)
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