ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

ミステリー・ウォーク ロバート・マキャモン

2010-03-26 17:38:00 | 
私が勝手にホラー四天王と呼ぶ作家がいる。

スティーブン・キングが筆頭なのは当然だが、殺戮のクライブ・バーカー、エンターテイメントの王者ディーン・クーンツ、そしてホラーの語り部ロバート・マキャモンだ。

ただし、マキャモンは現在はホラーからの脱却を宣している。私はこれが無念でならない。物語構成の上手さは、もしかしたらキング以上ではないかと評価しているからだ。

別に確信があるわけでもないのだが、もしかしたらキングはホラーを意図して料理している観が強い。キングにとって、ホラーの世界は、あって当然のものであって、それを分りやすく読者に提示してくる。

一方、マキャモンは自らの精神世界の内部にあるホラーの扉を開いて、そこからホラーを引っ張り出して読者の目の前に広げてみせる。

小学校の教室で、あるいは自宅のベッドの上で空想にふけるキングと異なり、マキャモンの場合はホラーが人生のどこかに日常的に存在していたように思えてならなかった。そしておそらくは、そのことを隠して生きていた青年がマキャモンだったのだろう。

私のそう思わせたのが表題の作品だ。マキャモンの自伝的作品と評されることが多いのも無理ない。他のホラー作家とは、どこか異なる気がしてならないのは、マキャモン自身の半生にホラーが付いて回ったからだろう。

おそらくは幼少期にはそれがホラーであることに気がつかなかったはずだ。だが、思春期を過ぎ大人への道程を進むにしたがってマキャモンはそれを隠して生きてきたのだと思う。

だが心に降り積もったホラーの思い出が、いつまでも隠すことを許さず、結果としてホラー作家としての人生を歩ませたと言ったら言いすぎだろうか。そして、或る程度ホラーを吐き出したが故に、ホラーからの脱却を決意させ、ホラーでない小説を書くことを決断させたのだろう。

実際、「マイン」「少年時代」「遥か南へ」「魔女は夜囁く」などは、うっすらとホラーの香りが漂うが、それでも普通の小説として十二分に面白い。

しかし、今回表題の作品を再読してみて思った。きっとマキャモンはホラーに戻ってくると。このような半生を送った人が、ホラーを忘れられる訳がない。私は信じているぞ、戻ってくるその日を。
コメント (2)
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