もし恐竜が滅びなかったら、こうして人類が地球上で繁栄することはなかったであろう。
同様に、もし昆虫が人間並みの大きさであったのなら、やはり人類のみならず動物が地上で繁栄することはなかったと思われる。
人間はもちろん、動物も爬虫類も骨が体内にあり、その周囲に筋肉をまとわせることにより動いている。それに対して昆虫は、外骨格といい、外を堅い殻で多い、内部の筋組織により体を動かす。
そもそもの身体の作りが違うが、その能力差も驚くほど違う。もし蚤が人間並みの大きさであったのなら、垂直跳びで1000メートルは軽い。またカブトムシならば、自重の100倍以上の重さを軽々と動かせる。
堅い外骨格ゆえに、衝撃に強く、高所から墜落しても、その衝撃を吸収できてしまう。また外骨格の特性として、動きを固定することにも向いているため、哺乳類には到底不可能な時間、同じ姿勢を保つことが出来る。
生物として比較してみると、哺乳類などとは比較にならぬほどその基本性能は高い。昆虫は宇宙から来た外来生物だとの奇論が出るほどである。もっとも地球の進化の過程をみてみると、既に生物としては完成しきった存在であり、これ以上の進化は望めないのかもしれない。
それに比べると人間は、肉体は脆弱であり、知能の高さと引き換えに失ったものは多い。だが、その弱さゆえに道具を発明し、文明を発達させて今日の地位を築いたと云える。
だが、現在の地球の地において数の上で最も繁栄を誇る生物(ただし、植物を除く)は、昆虫であり、なかでも蟻と白アリは群を抜いている。ほとんどの大陸で、蟻と白アリは生息域を確保している。
その数の多さゆえに、他の生物の餌となることが多い。ちなみにどちらもアリと名がつくが、蟻がスズメバチから進化したとされるのに対して、白アリはゴキブリから進化したとされる。シロアリにも兵隊アリはいるが、基本的に草食性であり、攻撃的ではない。ただ、その生息数が桁外れに多く、その意味では脅威である。
一方、アリは蜂のなかでも特に攻撃力に優れたスズメバチから進化しただけに、その攻撃力は脅威的であり、しかも極めて攻撃的な生物である。バルポネラのような単体での強者もいるが、軍隊アリに代表されるように、むしろその集団での戦闘力こそ恐ろしい。
幸いにも、日本では毒性の強い蟻もいないし、集団攻撃性の強い蟻もいない。そのため軽視されるようだが、昆虫界において蟻は最強のポジションを確保している。もし、蟻が人間並みの大きさであったのならば、地球の支配者は人ではなく、蟻であった可能性は高い。
そんな蟻をモチーフにしたアメリカン・コミックのヒーローがアントマンだ。蟻に着目するとは、なかなかの慧眼である。でも、まァ、そんなうん蓄は捨て置いて、素直に、子供に還った気持ちで観れば、この映画けっこう楽しめます。
あまり期待はしていなかったのですが、私は十分笑い、笑顔で映画館を後にしました。