本音は面倒くさLい。
麻生財務大臣が言い放った科白だが、間違いなく本音であり、珍しく私も同感できる。
ただ、真面目に考えると、面倒くさいで済ませていい問題ではない。消費税の軽減税率の導入の流れは加速する一方で、財務省の幹部も本音はともかくも、導入止む無しとの姿勢をみせている。
財務省はスーパー官庁であり、大蔵省時代から首相官邸以上の権力者と云われたはずだが、世論の動きを背にした政治家には従わざるをえないのだろう。思うに野田・自民党税調会長の更迭が決め手であった。あれは首相官邸からの最後通牒に等しいものではなかったのだろうか。
財務省は、配布される資料を横流しするだけの記者クラブ詰めの新聞、TVはもちろん、霞が関寄りの経済評論家などを駆使して、さかんに軽減税率に反対していた。
しかし、このまま消費税を10%に上げることはマズイと判断した政治家の意向を気にしていたのも確かだ。だからこそ、あのマイナンバー普及を込みにした、おかしな還付制度を持ち出したりしたのだろう。
だが、その姑息な誤魔化しが、むしろ政治家の怒りを買った。だからこそ、大蔵省出身の野田氏を税調からはずし、間接的に財務省を威圧した安倍政権に屈したのだろう。
それでも、本音は軽減税率なんてやりたくない。その意を汲んだ麻生大臣の放言だと思う。あのざっくばらんな言い方の麻生氏だから、放言的な軽さを感じるが、税の現場で仕事をしている私からもみても、やはり軽減税率は面倒くさい。
まず、なにが軽減税率の対象なのか、それをどのように判別するのか。インボイスは時間的に間に合わないので、現行の領収証等で代行するのか、それとも別のやり方を導入するのか、
今でさえ消費税の処理は面倒なのに、これ以上複雑化すると顧問料の値上げを検討せざる得ない。消費税を払っているのは消費者だが、その申告納税は、消費者から代金を受け取った事業者、すなわち消費税の納税義務者に代行させる仕組みとなっている。
だから、普通の消費者にはその面倒くささが分かりづらい。税務の現場において、中小企業とりわけ零細企業の会計に携わる私にとっては、企業に代わって会計帳簿を作ることも少なくない。
それゆえに断言できてしまう、面棟Lいと。最低でも、なにが軽減税率の対象なのかを明示してもらわねば、とてもじゃないがまともな消費税の計算は出来ない。現行の領収証などでは、正しい判断は難しい。
おそらく、現行の方式でやれば、相当な数の間違いが発生する。その間違いが発生した場合の責任はどうなるのか。そもそも間違いやすいような制度で、まともな税務行政が可能なのか。どう考えても、かなりの間違いが生じる事請け合いである。
以前、研修で聞かされたのだが、イギリスでは大型間接税の軽減税率の対象を決めるのに5年間国会の特別委員会で審議し、施行後もその検証で10年の歳月を費やしている。
それだけの準備と実施後の見直しをしているにも関わらず、非常に不満が多く、見直しが叫ばれているのが大型間接税における軽減税率なのだ。悪いことは云わないから、今からでも遅くない。
消費税の増税は、今少し延期すべきだと思うぞ。