これには参った、見直した。
漫画家を取材する企画は、けっこうあるが、この作品では、漫画家の好きなお店で、好きな料理を教えてもらいながら、その漫画家の家族に取材するといった切り口が斬新であった。
でも、この企画だけで私は評価した訳ではない。この企画の作画は、あの田中圭一である。日本人の誰からも愛され、評価された手塚治虫の画風を模倣し、しかも手塚が絶対に描かないであろうお下劣なギャグ漫画「神罰」を出した、あの田中圭一である。
パクリ漫画家と呼ばれるほどに、田中の模写力は技量が高い。手塚だけでなく、永井豪や本宮ひろしを模倣したギャグ漫画を描いていたのは知っていた。だが、これほど模倣力が高いとは思わなかった。
なにせ、表題の作品では取材相手である漫画家の家族を、その漫画家の画風を模写して描いているのだ。手塚治虫の娘さんを手塚風の画風で描くのは想定内であった。
しかし、ジョージ秋山、池上遼一、上村一夫、矢口高雄・・・多彩な漫画家の画風をすべてパクって、インタビューを描いている技量に感服であった。ビックリしたのは、西原理恵子で、田中圭一とほぼ同期デビューだったとは。
そのせいか、西原編では、取材は店ではなく、西原の脱税御殿と呼ばれた自宅であり、子供へのインタビューに親同伴となり、二人のやり取りは爆笑ものであった。
既にサラリーマンとの二足草鞋は止めて専業のようだが、田中の強みは、社会に出て営業担当のサラリーマンとして、しっかり実績を積んだが故の常識力であると思う。こんな漫画家、実はそうそういない。大概の漫画かは、10代デビューしてひたすらに漫画の世界で生きてきているからだ。
インタビューなどの取材をして、それを漫画として表現する企画は、西原理恵子、現代洋子などが得意としているが、男性ではあまり見かけたことがない。まさか、あのお下劣ギャグ漫画の田中が、それをものにするとは思わなかった。
完敗です。漫画好きなら手に取って損はない作品だと思いますよ。
いろいろ、沢山読みたい本、漫画、観たい映画はあるのですが、今は繁忙期なのできついです。はやく、のんびりしたいです。